D2C(Direct to Consumer)は、メーカーが自社の直販チャネルを主な販路にし、お客さんのデータを使って直接アプローチを続けていくやり方だ。D2C THE MODEL は、『D2C THE MODEL』(花岡宏明・飯尾元)の第2章で示される、その D2C 事業を伸ばすためのフレームワークで、D2C を主軸にした顧客資産化の環境を武器に、メーカービジネスを最も効率的な体制で伸ばすための型だとされている。著者らが多くの D2C 事業の立ち上げとグロースから抜き出した「集合知」でもある。
顧客の資産化 では、D2C の成否を「粗利LTV − CPA > 0」の式で見ることを整理した。第2章ではこれを「LTV − CPA > 0」と書き、4つのプロセス全体を通して、この状態を再現性をもって成り立たせることを目指す。その動き方を、第2章をもとに整理する。
本は、D2C 事業を4つのプロセスのつながりとして捉える。それぞれが担う数字(KPI)と、問われる視点は次のとおりだ。
| プロセス | 担う数字 | 問われること |
|---|---|---|
| プロダクト/マーチャンダイジング | 打ち手の数 | ROI が合う形で、成長の手段をいかに増やすか |
| マーケティング | 露出量・来訪者数 | CPA を下げながら、購入者数をいかに増やすか |
| チャネル | 購入者数 | (マーケティングと合わせて同じ問い) |
| CRM/LTV | LTV | LTV を上げて、顧客の資産化をいかに進めるか |
本によると、D2C の成否は、この4つのプロセスを3つにまとめた「プロダクト/MD」「マーケティング/チャネル」「CRM/LTV」の総合力で決まる。そのうえで、ブランド戦略・業界と商流・運用体制・ローンチプロセス・システム・データという6つの事業与件(施策の前提となる条件)の理解が浅いと、必ず落とし穴が生まれるとしている。
4つのプロセスの数字は、掛け算でつながっている。
本は、特に BtoC の事業では「流行っているから、やってみよう」で施策を決めがちだと指摘し、代わりに次の3つを問うべきだとしている。
本は、すべての施策は数字でつながっているとしている。この3つの問いは、事業のフェーズごとに何を優先するかを決め、前後のプロセスの準備をそろえるために使う。
本は、1人を獲得するたびに LTV − CPA がプラスになるなら、資金が続く限り、獲得に投資するほど利益が返ってくるとしている。お客さん1人単位の採算を見るこの考え方は、本の KPI 設計(図2-4)では「ユニットエコノミクス(LTV ÷ CPA、LTV − CPA)」として並んでいる。
本はここから、LTV が高いほど競合より多くの獲得費用をかけられ、それがそのまま競争力になると説明している。
本は、お客さんを獲得するルートをつくって広げていく考え方そのものは D2C 特有ではなく、従来のメーカーが売上を伸ばしてきたやり方に近いとしている。違うのは、D2C では活動の単位がより細かく、PDCA が速く回ることだ。
| 従来のメーカー | D2C | |
|---|---|---|
| 最低限の活動範囲 | 商品開発に加え、中間流通への営業やプロモーションまで、大きくなりがち | デジタルマーケティングが中心 |
| 振り返りのサイクル | 長くなりがち | 成果をリアルタイムで確認し、短いスパンで PDCA を回せる |
| 成果を出すのに最低限必要なコストとリソース | 大きい | 低い |
本は、D2C で成功している事業者は、フェーズごとの注力点と順番をノウハウとして持ち、大きなリソースをかけずに一定以上の規模まで伸ばしているとしている。
事業の立ち上げで商品やマーチャンダイジングを整えたあと、最初に作るのがゴールデンルートだ。本は、お客さんを獲得する道を、次の4つの組み合わせ(顧客獲得ルート)として捉える。
この組み合わせのうち、許容できる CPA の範囲で、安定して再現性のある新規獲得ができるものがゴールデンルートで、まずこれを最低1つ成り立たせる。本は、ここから4つの段階で伸ばしていくとしている。
| 段階 | やること | 追う数字 |
|---|---|---|
| 1. ゴールデンルートの確立 | 安定して獲得できるルートを、最低1つつくる | 新規獲得数、CVR・CPA |
| 2. 新しいゴールデンルートの開拓 | 全体の CPA を崩さず、ルートを増やして獲得を伸ばす | 同上 |
| 3. 商品リニューアル・新商品・CRM 強化 | 1と2で作った顧客基盤に、再購入の機会を増やす | +LTV(購入単価・購入回数) |
| 4. 収益性の向上 | 規模を活かしてコストを見直し、利益を次の成長に回す | +営業利益率 |
段階が進むほど、追う数字が足されていく。最初は獲得、次に LTV、最後に利益率。本は、この順番に沿うことで、失敗率を最小限に抑えながら効率よく伸ばせるとしている。
本は、3つ目の段階を、従来のメーカーと D2C とで重要度がいちばん違うプロセスだとしている。従来のメーカーは商品別・店舗別の売上の総量しか追えず、お客さんと直接の接点も持てない。D2C はお客さん1人あたりの売上まで見えて、CRM で LTV を伸ばせるからだ。