# Column 特別定額給付金、マイナポイント、申請システムに困った人が続出 **中心主張**: 制度や機能を起点にシステムを設計すると、利用者がどのような状況・知識で申請を試みるのかというユーザー視点の検証が抜け落ち、わかりにくい説明や想定外の手戻りが発生する。UXライティング・UXデザインの発想が行政のデジタル化にこそ求められる。 **論の展開**: - デジタル・ガバメント推進のため行政サービスの電子申請が可能になっているが、まだまだ課題は多い - 2020年春、新型コロナによる経済の落ち込み対策として特別定額給付金(1人10万円)が閣議決定され、自治体の電子申請システムで申告が可能だったが、「システムも説明もわかりにくい」との声が続出。申告ミスが多く自治体職員が手作業でチェックしているとの報道もあった - 特別定額給付金ポータルサイトで「申請方法(オンライン)」を選ぶと表示される画面(図1)は、オンライン申請の条件である「マイナンバーカード」を持っていることが前提。しかし画面に※印で書かれている補足説明を読むと、申請から発行まで1か月以上かかること、窓口が混雑している場合はさらに時間がかかることが書かれている - これでは利用者はいつ給付を受け取れるのか不安になる。マイナンバーカードを持っている人でも、次の準備で「②マイナンバーカード読取対応のスマホ(又はPC+ICカードリーダ)」とあり、パソコンから申請するにはICカードリーダが必要になることが、ここで初めてわかる。ICカードリーダは一般のパソコンに標準装備されていない - これでは問い合わせが殺到するのも無理はない。ユーザーの状況やシステムでどのように理解して申請できるのか、ユーザー視点で検証していなかったのではないかと推察される - もう1つの例として、マイナポイントのポータルサイトにある説明文(図2)を検証。「マイナンバーカードを使って予約・申込を行い、選んだキャッシュレス決済サービス(※)でチャージやお買い物をすると、そのサービスのご利用金額の25%分のポイントがもらえるのが『マイナポイント』のしくみです」という説明には次の問題点がある:①一文が長く複数の内容が盛り込まれている②あらかじめ予約・申し込みを行うことと、キャッシュレス決済で利用するとポイント還元されるという2つの場面の異なる内容が一文の中にある③補足説明が※で示されたり括弧()で囲われたりして統一感がなく簡潔でない - これでは理解しにくく、すぐ使ってみよう・申し込んでみようといった利用者の行動にはつながらない - オンライン申請や申し込みが進むことで行政手続きのスピード化・サービス向上が期待されているが、実際のシステムはまだまだ「制度ありき」「機能ありき」で開発されていることが多いようだ - Google、Amazon、Facebook、Appleは、ユーザーの使いやすさと製品・サービスのわかりやすさ、技術進化のスピードで成長してきた企業。世界に通用するサービスに学び、わかりやすく伝える技術を政府や行政、民間企業で働く多くの人が磨いていくことで日本を元気にしていきたい、と著者は結んでいる **実践指針**: - 行政システムや制度説明を作る際は、「制度ありき」「機能ありき」ではなく、利用者がどんな知識・準備状況で画面にたどり着くかをユーザー視点で検証してから設計・記述せよ - 申請条件や所要期間など重要な制約情報は、後から※印や小さな補足で示すのではなく、利用者が最初に判断できる位置に明示せよ - 一文に複数の場面や条件(例: 予約・申込の場面とキャッシュレス決済利用の場面)を混在させず、一文一義で分けて説明せよ - 補足説明の表記方法(※、括弧など)を統一し、簡潔にまとめよ **根拠となる研究・事例**: - 状況 → 特別定額給付金のオンライン申請で「マイナンバーカードの保有」が前提条件だが、取得に約1か月かかること、パソコン申請にはICカードリーダーが別途必要なことが、申請途中の※印補足で初めて判明する構成だった - 結果 → 「システムも説明もわかりにくい」との声が続出し、申告ミスが多発、自治体職員による手作業チェックが必要になった - 示唆 → 重要な前提条件を後出しにする情報設計は混乱を招く。ユーザーが最初に必要な情報をすべて把握できる構成にすべき - 出典: 総務省「特別定額給付金」ポータルサイト(https://kyufukin.soumu.go.jp/)/総務省「マイナポイント」ポータルサイト(https://mynumbercard.point.soumu.go.jp/about/) **キーワード**: - 制度ありき/機能ありき: 利用者視点の検証が抜け落ちたシステム開発の陥りやすいパターン - ICカードリーダ: パソコンからのマイナンバーカード読み取りに必要な、標準装備でない機器