# 4.3 ユーザー視点でことばを選ぶ **中心主張**: 表現の統一よりもユーザーの実際の操作感覚・日常感覚に合わせたことばを選ぶこと、業界用語になっていないか見直すこと、そして「ユーザーが何をできるようになるのか」「ユーザーにとってどんなよいことがあるのか」をユーザー視点(主体「あなた」)で書くことが、伝わる文章の条件となる。 **論の展開**: - 電化製品の取扱説明書ではことばや表現を統一するのが一般的だが、無理に統一すると違和感のある文章になる場合がある - 例: レンタルサービスの予約手順説明で、どの手順も「〜を指定して〜ボタンを押してください」という表現に統一すると整然とした感じがするが、カレンダーから日にちを選ぶのに「日にちを指定する」というのはいかにも「コンピューターの操作」という感じがする。自分の名前や連絡先を入力ボックスに入れることを「指定する」というのもなんだかヘン - 文例4.3.2では、ユーザーが実際に行う操作や日常感覚に合わせてことばを変えた。「カレンダーから日にちを指定して」は「利用したい日にちを選んで」、「お名前、電話番号を指定して」は「お名前、電話番号を入力して」とした。こちらの方がユーザーにはしっくりくる - コンピューターなどの取扱説明書では「設定を行う」「印刷をする」などのことばをよく見かけるが、新聞など一般の読み物では「設定する」「印刷する」と表現する。「設定を行う」「印刷をする」は実はコンピューターならではの表現。会社の中で普段使っていることばも業界用語かもしれず、ユーザー向けに書く際はもう一度ことばを見直すべき - 文例4.3.3では、レンタルサービスの登録方法について法人向けと個人向けで必要事項は異なるが、文の形や語彙が同じになっている。法人向けならこのくらい堅い表現でもよいが、個人向けにはやや堅すぎる - 文例4.3.4では思い切って文の形を変え、「このレンタルサービスをすぐにご利用いただけます」というように、ユーザーが何をできるようになるのかを最初に書いている。個人向けの説明はユーザーの年齢層に合わせてカジュアルな表現を使ってもよく、ユーザーにマッチした表現を考える - 文例4.3.5では「ゴールドステージとは、利用ポイントが5000ポイントのステータスのことです」と簡潔でわかりやすい説明だが、単なる用語説明になっている。文例4.3.6では、ユーザーの視点に立ち「利用ポイントが5000ポイントに到達すると、ゴールドステージにランクアップします」というように、ユーザーにとってどんなよいことがあるのかを書いている - ユーザーの視点になっているかどうかは、文の主体(誰が/誰は/誰の)を加えてみるとわかる。「あなたの利用ポイントが5000ポイントに到達すると、あなたはゴールドステージにランクアップします」のように「あなた」を加えてみると、修正前とは異なり「あなた(ユーザー)」の視点から書かれていることがわかる **実践指針**: - ことばの表現を機械的に統一しようとせず、ユーザーが実際に行う操作や日常感覚に照らして自然な表現かどうかを都度確認せよ - 「設定を行う」のようなコンピューター特有の表現は、一般の読み物で使われる自然な表現(「設定する」)に置き換えよ。自分が普段使うことばが業界用語でないか見直せ - 説明文の冒頭には「ユーザーが何をできるようになるのか」を最初に書け(用語や仕組みの説明を先に書かない) - 用語の定義を説明するだけで終わらせず、「ユーザーにとってどんなよいことがあるのか」という利益・結果を主語(あなた)視点で書け - 文がユーザー視点になっているか迷ったら、文に「あなたが/あなたは/あなたの」を補ってみて違和感がないか確認せよ - 法人向け/個人向けなど読み手が違う場合は、必要事項が同じでも文の形や語彙・堅さのレベルをその読み手に合わせて調整せよ **根拠となる研究・事例**: - 例 → レンタルサービスの登録案内。法人向けは堅い表現のままでよいが、個人向けは「このレンタルサービスをすぐにご利用いただけます」のようにユーザーができるようになることを最初に書く形に修正(文例4.3.3→4.3.4) - 例 → ゴールドステージの説明を、単なる用語説明から「あなた」を主体にしたユーザー視点の文に修正(文例4.3.5→4.3.6) **キーワード**: - 業界用語: 会社の中で普段使っていることばが実はユーザーに伝わらない専門用語である可能性 - ユーザーが何をできるようになるのか/ユーザーにとってどんなよいことがあるのか: 説明文の冒頭に置くべき視点 - 文の主体(あなた)視点: 「あなた」を補って確認する、ユーザー視点になっているかのチェック方法