# 2.5 限られた時間の中でユーザーに必要な情報を提供する **中心主張**: 人的資源が限られた組織では、情報を受け取るユーザーの状況やその時点で本当に知りたいことを整理し、必要な情報を絞り込んで段階的(第1弾・第2弾)に提供することで、少ないリソースでもユーザーに届く情報発信ができる。 **論の展開**: - 2020年のコロナ禍で日本中の大学が対面授業からオンライン授業に一斉移行、教員の多くが未経験で現場は大混乱 - 東京大学のような人的資源が豊富な大学は専用ポータルサイト「オンライン授業・Web会議ポータルサイト」で日々情報発信できたが、地方の小規模公立大学(はこだて未来大学)は限られた人員で情報を絞り込む必要があった - まず情報を受け取るユーザー(教員)を整理し、心の声を書き出す方法で「今、教員が何を知りたいか」を明確化(図2.5.1)。この時点で知りたいのは「オンライン授業とはどういうものなのか?」 - 即時性を重視し、全学集会(3/13)から3日後の3月16日に『オンライン授業の進め方』第1弾(PDF、4ページ)を配布。オンライン授業の種類(同期型・非同期型)とメリット・デメリット・注意点のみに絞り込んだ - オンライン授業未経験の教員が多いことから、YouTube上のZoomオンライン授業実例URLを紹介し、実際に体験してもらう工夫をした - 教員の関心が「オンライン授業とは何か」から「自分の授業で具体的にどうやって実施すればよいか」に移ったのに合わせ、3月27日配布(作成期間約10日)の第2弾では未来大で行われる授業タイプ別に、オンライン授業の具体的な作成手順を画面入りで説明 - 目次は表紙に掲載し目的別に構成(例:「1. スライド等の資料による授業を同期型で行う」)。教員は自分が行いたいところだけを直接参照できる - すべての資料を自前で作成するのは大変な手間がかかるため、Zoomの応用的な使い方などはネット上の既存情報(マニュアルサイトのURLやYouTube検索のコツ)を紹介する形で工数を節約 - 教員自身がそれぞれ工夫を重ね(大沢英一教授は数学授業に書画カメラを導入、櫻沢繁教授はコメント表示ツール「パパパコメント」で双方向コミュニケーション)、資料を基にさらに発展させていった。「ユーザーは最初に得た情報から学び、さらに進化していく」のもUXの特徴の一つ **実践指針**: - リソースが限られる組織では、まず情報を受け取るユーザーの状況を整理し、「その時点で何を知りたいか」を心の声として書き出してから情報提供内容を絞り込め - 緊急時は即時性を優先し、必要最小限の情報に絞った資料を素早く出し、後から詳細版を追加する段階的アプローチを取れ - ユーザーが未経験の対象については、実例(動画URL等)を紹介し実際に体験してもらう導線を用意せよ - ユーザーの関心が変化するタイミング(例: 概念理解→実行段階)を見極め、資料の内容・目次構成を関心の移り変わりに合わせて更新せよ - 目次は機能列挙ではなく「目的別」に構成し、ユーザーが自分の状況に該当する箇所だけを直接参照できるようにせよ - すべてを自作せず、信頼できる外部の情報源を紹介することで、限られた作成期間・人員を節約せよ **根拠となる研究・事例**: - 状況 → 2020年2月28日に北海道で緊急事態宣言、3月13日に新学期4月20日延期・オンライン授業実施が決定。オンライン授業開始まで5週間、資料作成に使える期間はわずか2週間 - 結果 → 第1弾(3月16日配布、4ページ)はオンライン授業の種類とメリデリに絞り込み。第2弾(3月27日配布、作成期間約10日)は授業タイプ別の具体的手順を画面入りで解説 - 示唆 → 情報過多を避け、ユーザーの心情・関心の変化に応じて段階的に情報を出すことが、限られたリソースでの情報発信に有効 - 出典: 東京大学「オンライン授業・Web会議ポータルサイト」https://utelecon.github.io/、パパパコメント http://papapac.com/ **キーワード**: - 心の声: ユーザーがその時点で知りたいことを整理する手法(図2.5.1) - 目的別の目次: どの授業タイプをどう行うかで分類し、必要箇所だけ参照できる構成 - 段階的な情報提供: 第1弾(概要)→第2弾(具体的手順)と関心の変化に合わせて発信を分ける方法