# 第2章 UXライティングで課題を解決する(前半)
(この章はpart1では途中までで、続きはpart2に収録。以下はpart1に含まれる2.1〜2.3節前半の内容)
**中心主張**: UXライティングは海外の巨大IT企業に限らず、国内の様々な業種(保険、電機、システム開発など)で、ユーザーとの継続的な信頼関係を築くための具体的な手法として実践されている。
**論の展開**:
- UXライティングは電子政府・自治体、IT大手企業(GAFA等)、ネットサービス企業、流通・小売、製造・販売、医療・ヘルスケア、生命保険、水産、教育など幅広い業種・分野で活用されている
- 紹介事例に共通するのは、組織としてユーザーとの関係性をよくする目的でUXデザインのプロセス・手法を取り入れ、画面やメッセージを継続的に評価・改善している点
- 事例1(株式会社コンセント): サービス開発の初期段階でユーザーの「ことば」をワークショップで集め、「CIS(コンセプトインプレッションシート)」という仮想パンフレットを作成して関係者と共有する手法
- 事例2(ヤマハミュージックジャパン): FAQサイトのコンテンツを「製品視点」から「顧客視点」に書き換えることで、ユーザー評価を改善した実例(本書ではさらに続きがpart2に続く)
**実践指針**:
- サービス開発の初期段階では、完成前でも「仮想パンフレット(CIS)」のような形でコンセプトを言語化し、関係者(クライアント担当者、ユーザーテスト対象者)と共有せよ
- ユーザーニーズや価値観を分析する際は、マーケティング調査の結果分析だけに頼らず、ワークショップで対象ユーザー本人の「ことば」を直接集めよ(ユーザー自身も気づいていないニーズが見えてくる)
- アプリのUI文言を作る際は、ユーザーから引き出された「保険に関する距離感」「面倒そう」といった気持ちに寄り添った表現にしつつ、1画面あたりの情報量もコントロールし、心理的負荷を減らすように設計せよ
- まだ世の中にない新しいサービスコンセプトを説明する資料では、ビジュアルと簡潔な説明文を組み合わせ、利用者だけでなく決済事業者・パートナー企業など関係者ごとのメリットも個別に整理して伝えよ
- FAQコンテンツが「役に立った」と評価されないときは、製品視点(自社製品の説明から始める)ではなく顧客視点(ユーザーが本当に知りたい前提知識から始める)に書き換えることを検討せよ
- FAQは作って終わりにせず、複数担当者による定期会議(例: 月2回)で「はい/いいえ」評価データを基に改善を継続せよ
**根拠となる研究・事例**:
- NPO法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)早川誠二氏のコメント → UXライティングの重要性は「人間中心基礎知識体系」でも言及されており、行政・企業などの幅広い人材に向けて体系化が進んでいる
- 株式会社コンセント(1971年創業、エディトリアルデザイン→情報アーキテクチャ→サービスデザインへ領域拡大)SD/UXデザイン部門・大崎優氏 → 「マーケティング調査だけではユーザーが何を望んでいるかわかりにくい」として、ワークショップ等で多様なニーズを深く探るプロセスを重視
- 第一生命保険株式会社の若者向け保険サービス「Snap Insurance」(2020年7月31日サービス終了)の開発事例 → 大学生を集めた丸1日のワークショップ(人生すごろく・人生マップ作成)で「手軽に利用したい」「友だちと一緒に使いたい」等のニーズば言葉として集まり、「サクッと始める」というコンセプトコピーに結実。UXデザイナー黒坂晋氏はチャット形式のオンボーディングUIで、ユーザーの「保険に関する距離感」「面倒そう」という気持ちに配慮し、相づちを交えた自然な会話調の画面文言を試行錯誤で設計
- 日本ユニシス株式会社の価値交換基盤「doreca™」のCIS・プロトタイプ(コンセントが2018年に作成、幕張メッセの国際展示会向け資料)→ 複数電子マネー間でポイント・残高を交換するという、当時世の中になかった体験をビジュアルと説明文で表現。利用者・決済事業者・パートナー企業・小売(加盟店)それぞれのメリットを個別に整理して提示
- 株式会社ヤマハミュージックジャパン お客様コミュニケーションセンター長・平井大生氏、FAQ運営メンバー・山田貴美子氏 → 電子ピアノのヘッドホン対応に関するFAQで、「現在発売されている電子ピアノのヘッドホン端子は『ステレオ標準フォーン』端子です」という自社製品説明から始まる書き方(Before)から、「ヘッドホン端子には2種類の形状がある」という顧客の状況理解から始める書き方(After)に変更したところ、ユーザー評価(「役に立った」の回答率)が向上。7つの製品グループから1名ずつ選出したメンバーが月2回の会議で継続的に改善する体制を敷いている
**キーワード**:
- **CIS(コンセプトインプレッションシート)**: サービス開発の初期段階で作成する、仮想のパンフレット・チラシのような資料。クライアントへの説明やユーザーテストに活用する。
- **サービスデザイン(SD)**: ユーザー体験(UX)を軸に、ユーザーだけでなく関係する事業者・企業のメリットも含めて設計するデザイン領域。
- **FAQ(Frequently Asked Questions)**: よくある質問。顧客接点として、日々変わるユーザーニーズを可視化する場にもなる。
- **製品視点 vs 顧客視点**: 自社製品の仕様から説明を始める書き方(製品視点)と、ユーザーが置かれた状況・知りたいことから説明を始める書き方(顧客視点)の対比。UXライティングでは後者への転換が推奨される。
(part2に続く:2.3節「FAQ運用・活用会議を定期開催し改善に取り組む」の途中から)