# PART 9 「成功への道」を切り拓く人たち ——あとに続くのは誰だ(最終章)
**中心主張**: 短期的にはテイカーが勝つように見えるが、人と人がつながる時代では評判が資産となり、長期的にはギバーが最も遠くまで行く。ギバーの成功は「他人を蹴落とさない成功」であり、周囲にも利益が波及するため、増やせば増やすほど全体が豊かになる。だからこそ成功の定義そのものを「個人の業績+他人への貢献度」へ更新すべきだ、というのが本書の結論である。
## 実践指針
- **交渉の場面では「勝者と敗者しかいない」という前提を捨てよ。** 短期の取り分は増えても、破れた関係と落ちた評判が長期の損失になる(デリクの失敗)。
- **相手の要求を突っぱねたくなった場面では、まず相手の本当の利益を理解せよ。** 知能の高い交渉者ほど「相手に有利な取引をしているように見せる」ことで、自分の総利益も最大化している。
- **リーダー・管理職の立場では、評価軸を「個人の業績」だけでなく「周囲の生産性への影響」を含めて設計せよ。** ギバーの真の価値はこの二階部分に出る。
- **成功したい場面では、キャリアの早い段階から他者の成功に投資せよ。** 与える人はネットワーク・協力・評判の3つの資産を同時に積み上げる。
- **自分がテイカーだと自覚した場面では、性格を変えようとするより「与える行動」を先に始めよ。** デリクは価値観を新たな領域(若手指導・チーム優先)で発揮することで転換した。
- **「損をするのでは」と迷う場面では、まず小さな工夫(ちょっといいこと)から試せ。** 成功の階段は最上段と最下段の両方にギバーがいる。分けるのは自己犠牲か他者志向かだけである。
## 根拠となる研究・事例
- **デリク・ソレンソン(仮名)**: NCAA選手からスポーツ代理人へ。交渉学の授業では漁獲量を巡る4人の漁師の演習で乱獲役を演じ、自分だけ70%(他は各1%)を獲得して「商売敵をつぶす」と宣言。実務でも数千ドルの上積みのために球団との関係を壊し、「あいつは汚い手を使う」という評判が定着。クラス末の投票では「もっともあこぎで賞」に唯一の得票ゼロならぬ全得票で選ばれ、彼と接したことのない学生からも票が入った。現在はギバーに転じ、若手アスリートを指導、選手からもチームからも敬意を払われている。
- **ブルース・バリーとレイ・フリードマン(ヴァンダービルト大)**: 受講生約100人のGMATスコアと交渉成績を分析。知能の高い交渉者ほど総利益が高く、その理由は「相手の本当の利益を理解し、相手が少し得をしているように見せる取引をまとめる」から。頭がよいほど相手の成功に手を貸す。
- **チャールズ・ダーウィン**: 「常に助け合い、公益のために自分を犠牲にした部族が、ほかのほとんどの部族に勝利した——これは自然淘汰の結果なのだろう」(PART 8末尾からの接続)。
- **本書に登場した成功したギバーの総覧**: 起業家リフキン(アダム・リフキン、シリコンバレー)、ベンチャーキャピタリストのホーニック、脚本家のマイヤー(エミー賞、『ザ・シンプソンズ』)、会計学教授のコンリー、教育者スケンダー、コンサルタントのゲラーとバウアー(後進育成で予定より早くパートナー昇格)。いずれも他者の成功に投資することで自らの成功を拡大した。
- **著者の授業での問いかけ**: 「成功の階段の一番下で終わるのはどのタイプか」に学生はほぼ満場一致で「ギバー」と答えたが、実際にはギバーは階段の最上段と最下段に二極化する。
## キーワード
- **成功の再定義**: 個人の業績だけでなく「働く人の雇用スタイル、評価、報酬、昇進のやり方」に与える影響まで含めた成果。ギバーは「個人の業績+他人への貢献度」で測るべきだと考える。
- **その一歩先を見る(ギバーの視野)**: 目の前の取引ではなく、関係・評判・後進の未来まで含めて判断すること。
- **蹴落とさない成功**: テイカーの成功が誰かの損失を伴うのに対し、ギバーの成功は周囲にも利益を波及させるゼロサムでない成功。
- **ゼロサム/ウィン・ルーズ交渉**: 勝者と敗者しかいないという前提。デリクの初期の失敗の根源。
- **「もっともあこぎで賞」**: 交渉学クラスで評判が可視化された象徴的エピソード。評判は接点のない人にまで伝播することを示す。
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**本文の締めくくり(電子版100%地点)**: 「ほんの少しでもギバーになったら、もっと大きな成功や、豊かな人生や、より鮮やかな時間が手に入るだろうか——。それは、やってみるだけの価値はある。」で「了」。
**巻末について**: 本書の「アクションのための提言」「脚注」「参考文献」は本文に収録されず、三笠書房ホームページ(http://www.mikasashobo.co.jp)でダウンロード可能である旨の告知のみ。謝辞・訳者あとがきは本電子版には存在せず、著者紹介(アダム・グラント/監訳者・楠木建)と奥付(2014年1月18日発行、三笠書房)のみが続く。