# PART 2(続き)「与える人」の才能① 「ゆるいつながり」という人脈づくり <part1から続く章の後半>
(※ 章タイトルは part1-ch2-networking.md と同一の章。part2 分冊はこの章の後半、「こんな『ちょっとしたお節介』の効果」節の途中=リフキンとスペンサーのエピソードの最中から始まる。part2 の10ページ目でこの章は終わり、PART 3 に入る)
**中心主張**: 人脈の真価は「新しく人と知り合うこと」より「すでにある弱いつながり・眠っているつながりを再び活性化させること」にある。ギバーは見返りの負い目を相手に負わせないため、この再接続を最も低コストで実行できる。さらに、与える行為は直接の相手を超えて三段階先まで感染し、パイ(総額)そのものを大きくする。
## 実践指針
- **新しい情報や機会が欲しい場面では**、親友や同僚(強いつながり)ではなく、ゆるい知人(弱いつながり)を当たれ。強いつながりは自分と同じネットワーク内で交流しているので、持っている情報が重複する。
- **弱いつながりに頼みづらいと感じる場面では**、ゼロから知り合うのではなく「三年以上音信不通の元同僚・元知人」に連絡せよ。これが**休眠状態のつながり(リコネクト)**で、信頼感は残ったまま、相手は別の環境で新しい情報を蓄えている。
- **休眠状態のつながりを掘り起こす場面では**、まず十人リストアップして全員に連絡せよ。レビンの実験では、被験者が「価値が低い」と自ら順位づけした相手からのアドバイスも、価値の高い発見をもたらし、順位とは関係がなかった。
- **年をとるほどこの手を優先せよ**。維持できる人間関係は生涯で100〜200人が限度なので、加齢とともに休眠状態のつながりの在庫だけが増え続ける。40〜50代は30代より、30代は20代より多くのメリットを得ている。
- **人に何かしてあげる場面では**、価値を「交換」しようとせず「増やす」ことを目指せ。これが**五分間の親切**——誰に対しても、五分もあればできる親切(紹介・推薦文・一言のアドバイス)を惜しまない。
- **助けたあとに見返りを求めるな**。リフキンは相手にお返しをさせるのではなく、「与えるチャンス」を相手に生み出させ、ネットワーク全体に恩を送らせている。
- **初対面の相手と関係を築く場面では**、話すのではなく **思いやりをもって質問をし、辛抱強く話を聞け**。これがリフキンの成功の秘訣。
- **ギバーとして働くなら、生産性が落ちるのを恐れて助ける頻度を下げるな**。フリン教授の調査では、ギバーの生産性が落ちるのは「まれにしか助けなかったとき」で、頻繁に助けていた人ほど生産性も地位も高かった。カギは「より多く与えること」。
## 根拠となる研究・事例
- **アダム・リフキンとグレアム・スペンサー**: 1994年、リフキンは無名だったパンクロックバンド「グリーンデイ」の非公式ファンサイトを運営していたスペンサーにEメールで助言し、サイトを「本物のパンクロック」寄りに立ち上げる手伝いをした。スペンサーが検索エンジン「エキサイト」の共同創業者だと知ったのはずっと後。五年後、リフキンがシリコンバレーに移った際にスペンサーは快く応じ、ベンチャーキャピタリストを紹介。リフキンは自分の会社を設立できた。**ギバーには「五年後」に効いてくるネットワークがある**という象徴的エピソード。
- **マーク・グラノヴェッター(スタンフォード大社会学者)「弱い紐帯の強さ」**: 転職したばかりの専門職・技術職・管理職を調査。仕事の情報を強いつながりから得ていたのはほぼ17パーセントで、多くの人は弱いつながりから得ていた(約28パーセント)。弱いつながりは異なるネットワーク間の「**橋渡し**」として働き、新しい情報へのアクセスを与える。
- **ダニエル・レビン、ジョージ・ウォルター、キース・マーニガムの休眠つながり研究**: 企業の管理職に「三年以上音信不通の知人を十人見つけ、全員に連絡して現在進行中の仕事についてアドバイスをもらう」よう指示。被験者は「え、嫌だなあ。休眠状態なのに連絡をとる必要が?」と抵抗したが、結果は**休眠状態のつながりからのアドバイスのほうが、現在進行形の親しい人二名からのアドバイスより有益**と評価された。理由は、音信不通のあいだに双方が別の環境・考え方に触れ、新しい情報をもたらすため。ある被験者「連絡をとってみるまえは、自分がすでに考えている以上のことを教えてもらえるとは思っていませんでしたが、それは間違っていました」。
- **ステファニー・スワンベック(LinkedIn採用担当者)とボブ**: 一度会っただけのスワンベックの依頼で、リフキンは失業中のボブに会い、投資家や協力者に紹介。ボブはベンチャー企業のエンジニア職を得て、六カ月後にその会社はグーグルに買収された。リフキン自身はボブに会うことすら申し出ておらず、「たまにしかお話しできませんが、あなたが思っている以上に、私は助けてもらいました」と言われている。
- **ジェームズ・ファウラーとニック・クリスタキスの「恩送り(Pay it forward)」実験**: 4人グループ、6ラウンドの公共財ゲーム。各自3ドルを持ち、グループに与えると全員が3ドルずつ得る(1人が与えると計12ドル、全員が与えると各自8ドル)。メンバーは毎回入れ替わり匿名。結果、**与える行為は直接の相手だけでなく「次の人、その次の人、そのまた次の人」の三段階先まで広がり、結果として三倍になる**。一貫したギバーが一人いるだけで、他のメンバーは平均26パーセント多くを得た。「与えることは感染する」。
- **フランク・フリン教授(当時コロンビア大、現スタンフォード大)のエンジニア調査**: サンフランシスコのベイエリアにある大手電気通信会社のエンジニアに、互いをギバー/テイカー/マッチャーか、また同僚をどのくらい助けているかを1〜10で評価させた。ギバーは最も尊敬され信望を集め、テイカーは最下位。ただしギバーは生産性が低かった——人助けに時間を費やし、自分の仕事量と質が落ちたため。しかし詳細に見ると、**生産性が最低だったのはギバーが「まれにしか助けなかった」とき**で、頻繁に助けていたギバーが最高の生産性と最高の地位を手にしていた。
- **リフキンとリード・ホフマン**: 2005年にリフキンがレンコーを立ち上げたとき、まだオフィスがなかったため同僚がホフマンに紹介し、ホフマンは設立まもないLinkedInの空き机を使わせた。ユーチューブはすぐ隣の会社だった。リフキンは現在もLinkedInに人材を紹介し続けている。
- **キース・フェラッジ**: 「成功の秘訣を一語でいうなら、それは"寛大さ"だ」「本当に助けが必要なときには、休眠状態の知り合いにつながり、思いがけない支援を受けることができる」。
## キーワード
- **弱いつながり(弱い紐帯)**: 親密でない知人。異なるネットワークの「橋渡し」となり、新しい情報・機会への最短ルートを与える。ただし気楽に連絡できるとはかぎらず、信頼感も薄い。
- **強いつながり**: 親友や同僚。「絆」を生むが、同じネットワーク内で交流しているため情報が重複し、新しいきっかけを生みにくい。
- **休眠状態のつながり(リコネクト=再びつながること)**: 三年以上音信不通になっている元知人。信頼感は残ったまま新しい情報を持っているため、弱いつながりの利点と強いつながりの利点をセットで得られる。ギバーが最終的に成功する大きな理由。
- **五分間の親切(five-minute favor)**: 誰に対しても、五分もあればできる親切を実行すること。価値を「交換」するのではなく「増やす」ことを目指す姿勢。
- **恩送り(Pay it forward)**: 受けた恩を、恩人本人ではなくネットワークのほかの誰かに「送る」こと。ゼロサムゲームをウィン・ウィンに変える。
- **ゼロサムゲーム → パイを大きくする**: テイカーは決まった大きさのパイから自分の取り分を最大化しようとするが、ギバーはパイ(総額)そのものを大きくする。