# PART 2 「名刺ファイル」と「フェイスブック」を見直せ——「与える人」の才能① 「ゆるいつながり」という人脈づくり
> 「誰でも、創造的な利他主義の明るみを歩くか、破壊的な利己主義の暗闇を歩くかを決めなければならない」——マーティン・ルーサー・キング Jr.(章扉引用)
(※ 本ノートは part1 に収録された範囲まで。章の後半「五分間の親切」「休眠状態のつながり」以降は **part2に続く**)
**中心主張**: 人脈は「知識・専門技術・影響力」へのアクセスを与える強力な資産であり、ギバーもテイカーも広い人脈を築ける。だが築き方と持続性が決定的に違う。テイカーは有力者にへつらい下位者を冷遇する二面性を持つため、ネットワークの評判が広まるにつれ関係が断たれる。SNSの普及で評判情報の透明性が高まり、テイカーが「レック」(自己顕示の痕跡)を隠し通すことは以前よりはるかに難しくなった。
## 実践指針
- **人と会うまえには**、「相手が誰であろうと、自分にこう問いかけよ——『この人にどんなことをしてあげられるだろうか?』」(ガイ・カワサキ)。相手の肩書きで態度を変えるな。
- **相手を助けるタイミングを決める場面では**、頼まれる前・恩を売る必要が生じる前に与えよ。すでに助けを必要としている人に与えるのは戦略的な打算と見られ、価値が下がる。
- **テイカーを見分けたい場面では**、その人が上司に見せる顔ではなく、部下・同僚に見せる顔を見よ。テイカーは上に従順、下に支配的という二面性を必ず表現する。
- **企業や経営者を評価する場面では**、年次報告書のCEO写真の大きさと、インタビューでの一人称代名詞の頻度を見よ。テイカーのCEOは自分の写真を1ページ大で載せ、一人称単数を多用する。
- **人脈を広げる場面では**、有力者だけを狙うな。ギバーは業界の下位層(元シェフ、無名のブロガー)にも与え続けることで、結果的に最も広く強靭なネットワークを得る(リード・ホフマン、アダム・リフキン)。
- **採用・取引先の審査では**、提出された照会先を鵜呑みにせず、LinkedInやFacebookで共通の知人を辿って評判を確認せよ。「一時間話しただけでわかることはほんのわずか」(ハワード・リー)。
- **助けを求めることをためらう場面では**、先に与えていれば求めやすくなることを思い出せ。「助けてくれた人にお返しをするどころか、テイカーとマッチャーはしばしば先を見越して、近々助けてもらいたいと思っている人に親切にする」。
- **マッチャーとして振る舞うなら**、ネットワークが「見返りを期待できる相手」に狭く限定されるコストを自覚せよ。
## 根拠となる研究・事例
- **ケネス・レイ(エンロン元会長兼CEO)**: 貧しい生まれから米最大級の企業を築き、慈善事業に2500万ドル超を寄付し「善良で気前のよい人物」と評されたが、実態はテイカー。会社の資産を私物化し、破綻直前に7000万ドル以上の株式を売却。2001年12月にエンロン破綻、2万人が失職、六件で有罪。ピンクニー・ウォーカー教授との縁を利用して権力の階段を上がった典型例。
- **アリジット・チャタジー教授+ドナルド・ハンブリック教授**: コンピュータ・ハードウェアおよびソフトウェア企業のCEO100名超を10年分の年次報告書で分析。テイカーCEOは自分の写真を1ページ大で掲載し、インタビューで一人称単数(私)を多用(テイカーCEOの言葉の21語に1語、平均39%が一人称単数)。報酬も社内2位の3倍以上、業界平均の2.5倍。
- **ジョン・ハンツマン・シニアとの対比**: 真正のギバーであるハンツマンの年次報告書では自分の写真はページの10%程度。レイの写真は1ページ大。
- **動物行動学の「レック」**: 繁殖期の雄クジャクが縄張りで派手に求愛ダンスを踊る行動。テイカーはこれに酷似した誇示行動をとる。
- **ダニエル・カーネマンの最後通牒ゲーム**: 10ドルを2人で分ける実験で、8ドル対2ドルの不公平提案を、マッチャーの4分の3以上が自分の取り分ゼロを選んでも拒絶する。テイカーを罰するのは悪意ではなく「正義」の問題。
- **マシュー・ファインバーグらの調査**: うわさ話(評判情報)を共有すること自体が報酬として働き、テイカーを懲らしめる効果的で安上がりな処罰形態になる。
- **アダム・リフキン**: 自称「シャイで内気なコンピュータ・オタク」。『フォーチュン』誌の有力者640人以上のLinkedInコネクション数で、マイケル・デルら億万長者を抑えて1位。「106マイルズ」を設立し起業家を毎月2回無料でマッチング、5万名以上を教育。LinkedInに公開された推薦文365件のうち、自分が受けとった数の5倍以上を自ら書いている。モットーは「私は世界をよりよいものにしたい。そしてそれを、やりたい」。
- **リード・ホフマン(LinkedIn創業者)**: 「人を助けはじめると、評判がどんどん高まり、自分の可能性の世界が広がるだろう」。
- **Facebookプロフィール実験**: 面識のない被験者がプロフィールを見ただけでナルシスティックな人物を高い精度で判別できた。テイカーは実物以上によく見える自分の写真を投稿し、「友だち」を過剰に増やす。
- **ロバート・チャルディーニ**: 人は自分が受けとったものを先に相手に与えることで、ギブ・アンド・テイクの関係を土台にする。
- **キース・フェラッジ『一生モノの人脈力』**: 「受けとるまえに、与えるほうがよい」。
- **ケネス・レイのジョージ・W・ブッシュへの働きかけ**: 1994年テキサス州知事選で妻と1万2500ドルを献金、当選後2万4000通の陳情の手紙を送り規制緩和を要求。マッチャー的な「お返し」の先行投資。
## キーワード
- **レック(lek)**: 動物行動学用語で、雄が雌に自分をアピールする誇示行動。転じて、テイカーが権力・地位を誇示する痕跡(大判の自己写真、一人称単数の多用、極端な報酬格差)。年次報告書やSNSに残る。
- **ゆるいつながり**: 親密でない知人との関係。新しい情報やアイデアへのアクセスをもたらすが、頼み事をするには気まずい。ギバーはこれを自然に活性化できる。
- **人脈の三つのメリット(ブライアン・アザイ)**: ①個人的な情報 ②多種多様なスキル ③権力。
- **評判情報/うわさ話**: ネットワーク内で共有されるテイカー情報。テイカーを罰し、マッチャーの正義感を満たす低コストの制裁手段。
- **最後通牒ゲーム**: 一方が金額の分割を提案し、他方が受諾か拒否かを決める実験。マッチャーの公平志向を測る。
- **「相手が誰であろうと、この人にどんなことをしてあげられるだろうか?」**: ガイ・カワサキが語るギバーの基本姿勢。人と会うまえの問い。
## 未収録(part2に続く)
目次によれば、この章には以下の節がまだ残っている:
- 「五分間の親切」とは
- 「休眠状態のつながり」の効果
- この発想ができる人こそすべてが求められている
part1 の最終ページ(50ページ目、進捗22%)は「こんな『ちょっとしたお節介』の効果」節の冒頭で、1993年にグレアム・スペンサーら6人が「エキサイト」を共同設立し、1998年に6億7000万ドルで買収されるという導入部分の途中で終わっている。