# PART 1 あなたは、まだ「ギブ&テイク」で人生を決めているのか——いま「与える人」こそ、幸せな成功者となる
> 「ギブ・アンド・テイクの原則とは、駆け引きにほかならない——一を与えて一〇を得るのだから」——マーク・トウェイン(章扉引用)
**中心主張**: 成功を左右する要因は「やる気」「能力」「チャンス」の三つだと考えられてきたが、実際にはもう一つ、人との関わり方=ギブ・アンド・テイクのスタイルという第四の要因が決定的に効く。ギバーは短期では損をしやすく、あらゆる職業で「最低の成績」層に沈む一方、「最高の成績」層もまたギバーで占められる。テイカーとマッチャーはその中間に留まるため、長期的にトップに立つのはギバーである。
## 実践指針
- **相手のタイプを見極める場面では**、言動ではなく「ギブとテイクの時間軸のズレ」を見よ。ギバーは先に与え、テイカーは先に取り、マッチャーは五分五分に帳尻を合わせようとする。
- **投資・提携先を選ぶ場面では**、相手に決断を急がせず「じっくり考えてください」と時間を与えよ。ホーニックは期限を切らずに一件を失ったが、そのやり方が評判となり十一年で二十八件中二十五件を成約させた。
- **短期の交渉で不利になっても**、判断を長期の評判形成に置き換えよ。ギバーの恩恵は時間とともに大きくなり、テイカーの評判の毀損も時間とともに顕在化する。
- **サービス業・チーム仕事に関わるなら**、まず与える側に回れ。仕事の相互依存が高いほど、個人の評判と人脈が成果を左右する(米GDPの約8割がサービス業)。
- **顧客・部下から小さな依頼を受けたら**、採算だけで切らずに引き受けよ。ピーター・オデットは七万ドルの小口年金顧客を丁寧に扱ったことで、一億ドル超の基金へ発展させた。
- **自分がギバーかどうか判断する場面では**、自己申告を信じるな。職場で自分をギバーと答えたのは八%にすぎず、多くは「仕事中はマッチャーとして振る舞う」と答えている。
- **公私の価値観を切り分ける場面では**、私生活の「与える」価値観を仕事にも持ち込め。世界12カ国調査で大多数が「与えること」を人生で最も大切な価値と答えながら、職場ではそれを実践できていない。
## 根拠となる研究・事例
- **デビッド・ホーニック(ベンチャーキャピタリスト)とダニー・シェーダー(起業家)**: ホーニックは決断を急がせず一度は契約を逃したが、その姿勢が業界での評判となり、後にシェーダーからペイニアミー社の投資家として推薦される。取引成功率は約50%(業界平均をはるかに超える)。
- **カリフォルニア州のプロエンジニア調査**: 生産性が最も低いのも最も高いのもギバー。ベルギーの医学生600名超調査でも同じパターン(初年次は成績最下位、6年次で逆転)。販売業では売上最低もギバー、トップもギバー。
- **アダム・グラント自身の調査**: ギバーは年間売上がテイカー/マッチャーの2.5倍を売り、テイカーはギバーより収入が平均14%高く、犯罪被害者になるリスクは2倍。
- **エイブラハム・リンカーン**: 上院議員選を自ら降り、依頼人の弁護を同僚に譲るなどギバーとして行動。歴代大統領評価で上位3位以内に必ず入る。ドリス・カーンズ・グッドウィンの研究では、政敵を閣内に招き入れた点が評価されている。
- **サム・サンプソン(仮名)とC-SPAN人気投票**: 支持者に犠牲を強いずライバルに譲り続け、二度落選した後に上院初当選。
- **シャローム・シュワルツ(心理学者)の価値観調査**: 12カ国(後に70カ国以上)で「与えること」が最重要価値と答えた国が大部分。リスト1(富・権力・快楽・勝利)=テイカーの価値観、リスト2(援助・責任・社会主義・同情)=ギバーの価値観。
- **シェリル・サンドバーグ**: 「頼りにならない人間のように思われたくなかった」と語り、休暇を取ることに罪悪感を持っていたギバー。リーダーシップ研修で「やさしさと思いやりこそ最大の強み」と認識した。
- **チップ・コンリー(ジョワ・ド・ビーブル・ホテル創業者)**: 「ギバーであることは100メートル走では役に立たないが、マラソンでは大いに役立つ」。
- **ロバート・フランク(コーネル大学経済学者)**: ビジネススクールでの学習が「相手も自己中心的に振る舞いそうだ」という予期を生み、テイカー的行動を誘発する(自己成就的予言)。
## キーワード
- **ギバー(与える人)**: 見返りを期待せず、相手が何を求めているかに注意を払って先に与える人。受けとる以上に与えようとする。職場にはめったにいない。
- **テイカー(受けとる人)**: 常に、与えるより多くを受けとろうとする人。自分の利益を優先し、自分を守るために自己防衛的に振る舞う。
- **マッチャー(バランスをとる人)**: ギブとテイクを五分五分に保とうとする人。公平性を信奉し、「目には目を」の原則で自己防衛する。職場では第三のタイプが最も多い。
- **ギブ&ギブン**: 監訳者・楠木建の整理。ギバーは見返りに関係なくまず与え、結果としてあとから返ってくる(テイカーは「テイク&テイクン」)。
- **時間的に鷹揚であれ**: 監訳者の要約。ギバーの恩恵は「思いがけず来るもの」であり、速効性・確実性を求めるとギバーにはなれない。
- **他者志向性**: 自己犠牲とは異なり、自分の利益も確保しながら他者に利益をもたらす姿勢。「自己利益」と「他者利益」は一つの次元の両極ではなく独立した二軸。
- **ゼロサム/プラスサム**: ギバーの成功は周囲に波及し、パイ自体を増やす(プラスサム)。テイカーの成功は誰かの敗北を伴う。