# 第7章 自分を育てるセルフ働き方改革② コミュニケーション力を高める
**中心主張**: ビジネスのコミュニケーションには必ず「目的」があり、そのゴールは自分の考えを正確・高解像度で相手に伝え、相手が自律的に行動を起こすことである。人は「頭で理解」しただけでは動かず、「胸(心)の感情フィルター」を通って「腹で納得」して初めて動く。そして「伝えた」のに「伝わっていない」のは、ほぼ常に伝え手側の責任である。
## 実践指針
- 上司や先輩には、頼まれる前にこまめに報連相する。チャットのスレッドやDMで「今日の進捗報告(返信不要です)」程度のカジュアルなもので構わない。1分でできて費用ゼロ、効果は絶大。
- リモートワークでは報連相の頻度をさらに上げる。上司からは部下の仕事ぶりが驚くほど見えておらず、「安心していいのか」「声をかけていいのか」が判断できずにいる。
- 人を動かしたい場面では、伝えたい話を「(前)その話の背景」と「(後)それが達成されたときの状態」でサンドイッチする。中身だけを伝えると理解止まりで納得に届かない。
- 前後をつけても動かない相手がいる場面では、感情的態度(好きか嫌いか)を疑う。論理だけでもダメ、好かれるだけでもダメ。強い人は両方持っている。
- 一般人がいきなり相手の胸を打ち抜くのは難しいので、丁寧に頭から攻めて、胸の感情フィルターに引っかからないようにして腹に落とす、という順番を守る。
- 指示を出す場面では、まず「自分は明確なアウトプットイメージを持っているか?」と自問自答する。持っていないまま振るのは指示ではなく丸投げ。
- 指示は、相手がすぐ作業に取りかかれて期限通りに期待どおりのアウトプットが出せる解像度で出す。ラフスケッチがあればなお良い。
- 部下の提出物のクオリティに嘆く前に、自分の頭の中の解像度を確認する。提出物が自分の頭の中の解像度を超えることはほぼない。
- 指示を受ける側なら、「このまま進めるのは危険だな」と感じた時点で躊躇なく「もう少し細かい指示がほしい」と伝える。ただし「ちょうだい」ばかりだと「くれない族」になるので、「私は○○という理解をしましたが、間違いないですか?」と自分からアウトプットイメージをすり合わせに行く。
## 根拠となる考え方・事例
- 20年以上リーダー・マネージャー・社長業をやってきて「この人の報連相は完璧だ」と感心した人は数人しか記憶にない。それほど報連相が完璧な人は少ない。
- **わかるの5段階(社長と社員の例)**: 「わが社の事業が絶好調だ! 来月から新入社員を毎月10人ずつ増やす。受け入れを頼むぞ!」に対し、社員は①言葉はわかる ②意味もわかる ③理解はできる、まで来るが「現場はそんな簡単に回らねえんだよ」で納得できず、自律的に動かない。
- **前後をつけた例**: (前)「昨年の規制緩和で市場が前年対比3倍にふくれ上がっている。創業時に予想していたことで、今がチャンスだ」→(中)増員の話→(後)「わが社の顧客満足度は90%を超えている。ビジネスの拡大が顧客や社会の幸福につながるんだ。みんな力を貸してくれ!」。ただしこれでも社長が嫌われていれば「ケッ、きれいごとばかり並べやがって」で終わり、成立しない。
- **EQの高い人のショートカット**: 「言っていることは100%正しいがあなたはムカつくのでやりません」と言われる人より、「正直よくわかりませんが、面白そうだから一緒にやりたいです」と言われる人のほうが圧倒的に強い。理解を飛ばして胸に響けば一気に腹に落ちて行動につながる。
- **キャンプ撮影の指示例**: 「キャンプ場で"いい感じ"の写真を撮ってきて。テントはピルツ型で、真ん中におしゃれな車とステキなグッズ」では相手の頭の中はモザイク画像のまま。理想的な指示は「淡いグリーンと白のツートンの前期型ワーゲンバス/車からストライプのタープ/屋根にサーフボード/周辺にヴィンテージのボックスやランタン/望遠鏡やカラフルなジャグ/車の角度は斜めカット/真ん中に車、右側にノルディスク製のワンポール(ピルツ)型テント」の解像度。
- **指示が出せない2つの理由**: ①指示を出す本人が頭の中に明確な画像を持っていない ②持っていても伝え方が下手で伝わっていない。
- **伝達の劣化**: 「伝えたいこと」が100%「伝わっていること」になる状態は実現不可能。どんなに詳細な指示書を作っても情報は必ず漏れ、歪む。自分に明確な画像がない場合は、劣化した情報がさらに劣化して伝わり、「何だよ、こうじゃないんだよなあ」「あんなあいまいな指示でわかるわけない」という悲劇になる。
- 対面なら雑な指示も伝え方でごまかせるが、リモートワークは伝達効率が落ちるため、いっそう明確な指示が必要になる。
## キーワード
- **わかるの5段階**: 「言葉がわかる」→「意味がわかる」→「理解できる」→「納得できる」→「自律的に行動に移せる(GOAL)」。多くの伝達は「理解できる」で止まる。
- **頭・胸・腹**: 頭=理解、胸=共感や好意、腹=納得。ビジネスコミュニケーションは「頭→胸→腹」の順で撃つ。
- **胸(心)の感情フィルター**: 理解と納得の間にある関門。実体は感情的態度(好きか嫌いか、好意か敵意か)。ここを通過できないと、いくら頭で理解させても相手は動かない。
- **認知的態度/感情的態度**: 「良いか悪いか」(認知的態度)と「好きか嫌いか」(感情的態度)。人は両方で物事を決めるが、わかるの5段階には感情的態度が入っていない。
- **相手の頭に画像を置く**: 「仕事の指示をする」=「相手の頭の中に"画像"(明確なアウトプットイメージ)を置きに行くこと」。
- **丸投げ**: 自分の頭の中に画像がないのに相手に振ること。「やっておいて」は指示ではない。
- **くれない族**: 「もっと細かく」「詳細な指示を」と要求するばかりで自分からすり合わせに行かない人。
## work(本文中の設問)
- 自分の「上司・先輩への報連相」レベルを100点満点で自己採点する。今の仕事はどのタイミングで何回報連相すべきか。報連相の内容を事前にまとめる習慣をつける。
- 社内の苦手な人にお願いごと(「明日までに提案書を作成してほしい」など)をする場面を想定し、「頭→胸→腹」をどう撃つかシミュレーションする。
- 自分が他人に指示・依頼してうまくいったケース/いかなかったケースを思い出し、それぞれどう指示したかを振り返る。逆に、指示されてうまくできた/できなかったケースの原因も考える。