# 第3章 普通にやっていては上を目指せない時代をどう生き抜くか?
**中心主張**: リモートワークと働き方改革は、すでに一人前になった人には恩恵をもたらすが、これから仕事を覚える若手からは成長機会を奪っている。「先輩、ちょっと一瞬いいですか?」を数百回・数千回繰り返して一人前になる従来の経路が塞がれた以上、若手は自覚的に自分で学び、自分で量を稼ぐしかない。そして情報が誰にでもアクセスできる時代には、二次情報の価値は下がり続け、自分だけの一次情報を持つ「行動力」こそが最も価値のある才能になる。
## 実践指針
- **リモートワークが「ラクだ」と感じた場面では**、それは自分が一人前だからではなく、単に質問される側の中断がなくなっただけかもしれないと疑え。まだ半人前なら、ラクさと引き換えに成長速度を失っている。
- **わからないことが出てきた場面では**、オンラインであっても意識的に「ちょっと一瞬いいですか?」を打ち込め。上司や先輩の時間を奪うことに遠慮するな。今の一人前は全員そうやって時間を奪って一人前にしてもらった。
- **「もっと経験を積みたい」と思うのに会社のルールが壁になる場面では**、法令と社内ルールを守ったうえで、自分で圧倒的な努力をする方法を探して実行せよ。10年後に「国が働き方改革を推進していたから」と言っても誰も助けてくれない。
- **仕事の質を上げたい場面では**、先に量をこなせ。量をこなす中でしか、ムダとムダでないことは見分けられない。
- **就業時間が限られている場面では**、尋常でない集中力で決められた時間内に高い成果を出すことに集中し、質を高めるための量は自己啓発で稼げ(会社に隠れてサービス残業をしろという意味ではない)。
- **「教えてくれない」「やってくれない」「助けてくれない」というフレーズが頭をよぎった場面では**、自分が「くれない族」になっていると自覚し、その思考から卒業せよ。真っ先に手を挙げ、社内外で仕事を獲りに行き、上司の時間をもらうのではなく上司の仕事を奪え。
- **「自分はがんばっています」と言いたくなった場面では**、みんなも同じようにがんばっていると考えよ。一流や第一人者は相対的な価値であり、少しがんばった程度では他の人と同じである。
- **情報をインプットした場面では**、それが二次情報であることを認識せよ。ベストセラーを読んでも有名人のセミナーに行っても、自分だけの一次情報は1ミクロンも増えない。増やすには行動するしかない。
- **体験を選ぶ場面では**、希少性があるかを問え。すでに多くの人が体験していること(ウユニ塩湖でジャンプ写真など)は、行動していても貴重な一次情報にはならない。
## 根拠となる考え方・事例
- **リモートワークの数字**: 新社会人の9割超がテレワークに賛成(2022年 Job総研調べ/賛成68.4%+やや賛成27.2%、反対0.0%)。満足度も満足36.8%+やや満足34.2%。ただしZ総研×マイナビ転職の調査では希望在宅日数は週3日32.6%、週2日26.1%が多数派で、フルリモートより週数回出社のハイブリッド志向が強い。
- **著者自身の転向**: コロナ前はリモートワーク反対派だった。しかし強制的に移行してみると、アイデアブレストや難しい調整は対面が圧倒的に効率的な一方、報連相の会議はオンラインで十分機能すること、日中の勤務時間の3分の1が移動に費やされていたことがわかり、週2回程度の出社をニューノーマルとした。
- **早朝出勤が効率的な理由**: 「脳のゴールデンタイム」(起床後3時間)だけでなく、誰にも邪魔されず集中できることが主要因。抽象度の高い仕事は集中力が途切れると回復に時間がかかる。
- **著者のキャリア**: 1995年に社会人。サービス残業・休日出勤が当たり前の会社で在籍3年間で6年分の営業経験を積んだ。26歳でマーケティング業界へ転職、28歳でコンサルティング会社へ。長時間労働の3分の1は仕事量、残り3分の2は「もっと精度を高めたい」という自己判断によるもの。29歳で独立、34歳でトライバルメディアハウスを創業。「学歴なし、知識なし、経験なしだった自分が今の立場にいるのは20代の圧倒的な仕事量の賜物」と述べる。
- **働き方改革への疑義**: 日本は2013年に国連から長時間労働について是正勧告を受けた。著者は長時間労働の改善自体には反対しないが、「定時で帰りたい20代」と「圧倒的成長のためにもっと仕事がしたい20代」を一律に時短推進することは、多様な働き方の推進に逆行していると主張する。
- **引用**: サイバーエージェント藤田晋社長『渋谷ではたらく社長の告白』の「若いうちは質を高める前に、まずは圧倒的な量をこなすべき」。
- **仕事力=知識量 × 仕事の量 × 仕事の質**: ビジネスは全世代競争であり、ハードワークを経験したベテランと同じリングで戦う以上、同じ競技で勝つ見込みは低いという論理。
- **川とボートの比喩**: 川の流れは時代の流れ。漕がなければ流される(=価値が低下)。周りも漕いでいるので差はつかない。一流や第一人者を目指すなら、流れる川の中で他のボートより川上に上らなければならない。
- **司法試験の例**: 論文試験では六法全書が貸与される。暗記しているかではなく、どこに情報があるかを知ったうえで正解を導けるかが問われる。誰でもアクセスできる二次情報の価値低下を示す例として挙げられる。
## キーワード
- **一人前/半人前**: リモート環境で最も「ラク」ができるのは一人前の人。半人前は質問による学習経路を失い、一人前になるまでの時間が従来より延びている。
- **「ちょっと一瞬いいですか?」**: 職場で自然発生していた非公式の学習機会。集合研修やOJTだけでは補えない仕事の機微やコツを伝える経路であり、リモート化で最も失われたもの。
- **くれない族**: 「教えてくれない」「やってくれない」「助けてくれない」と考える人。会社が育ててくれる時代は終わるという前提のもとで卒業すべき思考様式。
- **一次情報**: 自分が体験したり独自に調査した情報。唯一無二の価値を持つ。
- **二次情報**: 他者による情報(ニュース、国の統計など)。誰でもアクセスできるため価値が下がり続ける。
- **三次情報**: 情報源がわからない情報。
- **行動力**: 情報大爆発時代において最も価値のある「才能」。自分だけの一次情報を積み、それを解釈・消化した量が人の価値を決める。
- **WHOの力/WHATの力**: (第4章で本格的に扱われる概念。この章の「行動力」の議論から地続きになっている。)