# PMBOK対応 童話でわかるプロジェクトマネジメント[第2版] 飯田剛弘 著、秀和システム、2022年11月9日 第2版第1刷(初版は2017年8月)。PMBOKガイド第7版のリリースを受けて改訂された入門書で、**前半の「童話編」(第1章〜第7章)と後半の「PMBOK編」(付章「PMBOKへの橋渡し」全13節)という二部構成**を取る。童話編は誰もが知る昔話をプロジェクトに見立ててPMの失敗パターンを物語で体感させ、PMBOK編でその体験を10の知識エリアと第7版の原理・原則に接続する。著者の定義では、プロジェクトマネジメントとは「チームで成果を出す技術」であり、PMBOKはそれを様々な規模のプロジェクトに適用できるよう抽象化した体系にすぎない。PMP試験対策書ではない。 個人利用の学習ノート(Kindle蔵書から生成)。 ## コアフレームワーク - **段取り八分(立上げ→計画→実行→終結+監視・コントロール)**: プロジェクトの成否は着手前の段取りでほぼ決まる。プロジェクトはルーチンワークと違い、PDCAではなくこの5つのフェーズで回す。違いは①計画の前に立上げ(目的・目標の設定)がある ②実行後に再計画し実績を測定してコントロールする ③終結時に成果と進め方を教訓として記録する、の3点。 - **童話が示す失敗パターンの4類型**: ①**目的・目標の欠如**(ウサギは「ゴール」ではなく「相手」を見て走った/兄ブタは相対的な目標で見切り発車した) ②**要件定義と定量的品質基準の不在**(「丈夫な家」では検証できない) ③**情報共有と報連相の断絶**(キリギリスは進捗も問題も誰とも共有しなかった) ④**リスクの再評価の怠り**(ヘンゼルは1回目の成功を振り返らず、前提が変わったのに同じ計画を再利用した)。いずれも能力不足ではなく段取りと共有の欠陥として描かれる。 - **チームとグループの違い**: チームは共通の目的のために集まり役割が異なり、助け合って**個々の成果の合計を上回る**。グループは各メンバーが同じ作業をし、成果は単純合計にとどまる。3匹の子ブタが失敗したのはグループ的に動いたからであり、桃太郎が成功したのはチームとして動いたから。「チームで助け合う」は全章を貫く最終教訓。 - **PMBOK第6版までの枠組み(5つのプロセス群 × 10の知識エリア)**: プロセス群は立上げ(始めることを全員に伝える)/計画(うまくいく進め方を決める)/実行(うまくいくよう振る舞う)/監視・コントロール(うまくいっているか見張る)/終結(終わらせる)。知識エリアは統合・スコープ・スケジュール・コスト・品質・資源・コミュニケーション・リスク・調達・ステークホルダーの10分野。すべてのプロセスを実行することが目的ではなく、必要なセルを選び取ることが重要。 - **PMBOK第7版の12の原理・原則**: ①スチュワードシップ ②チーム ③ステークホルダー ④価値 ⑤システム思考 ⑥リーダーシップ ⑦テーラリング ⑧品質 ⑨複雑さ ⑩リスク ⑪適応性と回復力 ⑫変革。これらは「振る舞いの指針」であり手順書ではない。その下に8つのプロジェクト・パフォーマンス領域(ステークホルダー/チーム/開発アプローチとライフサイクル/計画/プロジェクト作業/デリバリー/測定/不確実性)が置かれる。 - **テーラリングと開発アプローチの選択**: 標準やテンプレートをそのまま適用せず、プロジェクトの特徴や状況に合わせて取捨選択する。要件が事前に固まる大型案件はウォーターフォール、要件が決められない新規事業や短サイクルの更新はアジャイル、濃淡があるならハイブリッド。 ## 章インデックス ### 第I部 童話編(第1章〜第7章) | 章 | 童話 | 扱うPMテーマ | ファイル | |---|---|---|---| | はじめに | — | 本書の位置づけ、第2版改訂の背景、全体構成 | `chapters/part1-ch0-intro.md` | | 第1章 | 3匹の子ブタ | 段取り。プロジェクト判別/ステークホルダー分析/憲章/WBS/役割分担/見積り/ネットワーク図・クリティカルパス/ガントチャート/負荷率/リスク管理/スケジュール短縮 | `chapters/part1-ch1-three-little-pigs.md`(第1〜15幕)<br>`chapters/part2-ch1-three-little-pigs.md`(第16〜17幕・まとめ) | | 第2章 | ウサギとカメ | ゴール設定術。SMART/目的と目標の区別/前提条件と制約条件/「やらないこと」の明確化/なぜと何の反復 | `chapters/part2-ch2-tortoise-and-hare.md` | | 第3章 | 桃太郎 | 仲間術。内発的/外発的動機付け/カレンシーと影響力モデル/役割分担(P・S)/定例会議/行動計画のNGワード/コミュニケーションの構造/コンフリクト解消5類型 | `chapters/part2-ch3-momotaro.md`(第1〜7幕)<br>`chapters/part3-ch3-momotaro.md`(第8〜10幕・まとめ) | | 第4章 | ヘンゼルとグレーテル | リスク管理術。リスク登録簿/確率×影響度マトリックス/コンティンジェンシー・プラン/トリガー・ポイント/二次リスク/好機(チャンス)への4対応 | `chapters/part3-ch4-hansel-and-gretel.md` | | 第5章 | アリとキリギリス | 情報共有術。相手基準/ベースラインと実績の対比/バーチャートとマイルストーン・チャート/会議の5原則/シミュレーション/本当の進捗を聞き出す問い | `chapters/part3-ch5-ant-and-grasshopper.md`(第1〜7幕)<br>`chapters/part4-ch5-ant-and-grasshopper.md`(第8幕・まとめ) | | 第6章 | 長靴を履いた猫 | 信頼構築術。初頭効果/メラビアンの法則/ジョハリの窓/ラポール(ペーシング・ミラーリング・バックトラッキング)/単純接触効果/当事者意識/約束の履行 | `chapters/part4-ch6-puss-in-boots.md` | | 第7章 | シンデレラ | 付き合い術。ステークホルダー登録簿/権力・関与度グリッド/関与度評価マトリックス/ワイナーのモデル/嫌味のかわし方/内製と調達の判断/契約履行の検証 | `chapters/part4-ch7-cinderella.md` | | おわりに | — | 多様性の受容、統一すべき核と柔軟性の見極め、明文化の必要性 | `chapters/part5-ch99-outro.md` | ### 第II部 PMBOK編(付章「PMBOKへの橋渡し」全13節) | 節 | 知識エリア/内容 | ファイル | |---|---|---| | 1 | プロジェクトマネジメント用語の基礎知識(プロジェクト/プログラム/ポートフォリオ/組織構造/PMO/プロセス群と知識エリアの一覧) | `chapters/part4-appendix-pmbok-bridge.md` | | 1(続) | PMBOK第7版の12の原理・原則と8つのパフォーマンス領域、テーラリング、開発アプローチ | `chapters/part5-ch01-pmbok7-principles-continued.md` | | 2 | プロジェクトマネジメントのプロセス(5プロセス群 × 10知識エリアのマトリクス) | `chapters/part5-ch02-pm-processes.md` | | 3 | プロジェクト統合マネジメント(憲章/計画書/変更管理/終結) | `chapters/part5-ch03-integration-management.md` | | 4 | プロジェクト・スコープ・マネジメント(要求事項文書/スコープ記述書/WBS/スコープベースライン) | `chapters/part5-ch04-scope-management.md` | | 5 | プロジェクト・スケジュール・マネジメント(アクティビティ分解/PDM/スケジュール・ベースライン/クラッシング・ファストトラッキング) | `chapters/part5-ch05-schedule-management.md` | | 6 | プロジェクト・コスト・マネジメント(コンティンジェンシー予備/コストベースライン/EVM・PV・EV・AC) | `chapters/part5-ch06-cost-management.md` | | 7 | プロジェクト品質マネジメント(成果物の品質と作業の品質/品質監査/QC7つの道具) | `chapters/part5-ch07-quality-management.md` | | 8 | プロジェクト資源マネジメント(物的資源と人的資源/資源カレンダー/タックマンモデル) | `chapters/part5-ch08-resource-management.md` | | 9 | プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント(計画書/配付・伝達/監視と改善) | `chapters/part5-ch09-communications-management.md` | | 10 | プロジェクト・リスク・マネジメント(リスク登録簿/定性的・定量的分析/リスク監査と再査定) | `chapters/part5-ch10-risk-management.md` | | 11 | プロジェクト調達マネジメント(内外製分析/調達文書/定額・実費償還・T&M契約) | `chapters/part5-ch11-procurement-management.md` | | 12 | プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント(特定と影響分析/抵抗的・支持的への関与計画) | `chapters/part5-ch12-stakeholder-management.md` | | 13 | PMBOK第7版での変更(第6版との6つの違い/ITTO/PMIstandards+) | `chapters/part5-ch13-pmbok7-changes.md` | ## 相談トピック → 参照先 - **要件が固まらない/「丈夫な家」レベルの曖昧な要望しか出てこない** → 第1章(要求事項文書、定量的な品質評価尺度)、PMBOK編4(スコープ) - **目標を立てても実行されない/メンバーが動かない** → 第2章(SMART、目標が実行されない7つの原因、自分たちで設定し直す) - **何から手を付ければいいか分からない/全容が見えない** → 第1章(10の知識エリアで森を見る、7つの質問、キックオフミーティング) - **作業の抜け漏れが怖い/見積もりが甘いと言われる** → 第1章(WBS・WBS辞書、作業量と所要時間の区別、可変時間作業と固定時間作業)、PMBOK編5・6 - **スケジュールが遅れている/納期を縮めろと言われた** → 第1章(クリティカル・パス、ファスト・トラッキング、クラッシング)、PMBOK編5 - **特定の人に作業が集中している** → 第1章(負荷率の可視化、開始時期のずらし、チームでの調整) - **「順調です」という報告が信用できない** → 第5章(具体的に何をやったのかを聞く、ベースラインと実績の対比、チェック項目) - **会議が形骸化している/やる意味を疑われている** → 第3章(定例会議の8原則)、第5章(会議の5原則) - **リスクを洗い出したいが何から見ればいいか** → 第4章(ブレストとリスク登録簿、確率×影響度マトリックス、トリガー・ポイント)、PMBOK編10 - **想定外が起きて計画が崩れた/計画変更を迫られている** → 第4章(変更は失敗の元、二次リスク、承認手続き)、PMBOK編3(変更管理) - **ステークホルダーが多くて誰にどう対応すべきか分からない** → 第1章(権力×関心度マトリックス)、第7章(権力・関与度グリッド、関与度評価マトリックス)、PMBOK編12 - **反対する上司や部署がいる/嫌味を言われる** → 第7章(抵抗的な相手の目標は「中立」で十分、一言で流す、YES BUT) - **権限がないのに人に動いてもらう必要がある** → 第3章(カレンシー、コーエン&ブラッドフォードの影響力モデル、内発的動機付けへの移行) - **メンバーと信頼関係が築けない/初対面の相手と仕事を始める** → 第6章(第一印象、自己開示、ラポール、単純接触効果、約束の履行) - **メンバー同士が対立している** → 第3章(コンフリクト解消5類型、対決・対峙とアクティブリスニング)、PMBOK編8(タックマンモデルの動乱期) - **自分たちで作れないものがある/外注を検討している** → 第7章(内製と調達の判断)、PMBOK編11(内外製分析、契約タイプ別のリスク負担) - **問題を抱え込むメンバーがいる/悪い情報が上がってこない** → 第4章(「問題ないことが問題だ」の共有)、第5章(話しやすい場の設計) - **プロジェクトの終わらせ方が分からない** → 第1章(完了報告)、PMBOK編3(正式な受入と教訓の記録) - **PMBOK第7版を読み始めたが何をどう使えばいいか分からない** → PMBOK編1・13(原理・原則は姿勢として読む、具体的プロセスは第6版を参照) ## 回答時の注意 - **童話は覚えやすい比喩だが、実務の複雑さは意図的に捨象されている。** 各物語ではステークホルダーが数人、成果物が1つ、PMが1人という単純な構造に還元されており、複数プロジェクトの資源競合や組織政治、途中でのスポンサー交代といった現実の摩擦は描かれない。本書を根拠にするときは「思考の型」として使い、具体的な打ち手は現場の条件で組み直す前提で伝えること。 - **PMBOK第7版は原理・原則ベースで、プロセスの詳細は扱わない。** 本書自身が「第7版は第6版に取って代わるものではない」「具体的なプロセスやITTOが必要なら第6版を参照せよ」と明言している。手順レベルの助言が求められている場面で第7版の原理だけを返すと実務では使えない。逆に、不確実性の高い案件で第6版の手順を機械的に適用させるのも本書の意図に反する(テーラリングが第7版の要点)。 - **本書は入門書であり、記述は基本的な事項に絞られている。** PMP試験対策書ではなく、EVMやリスクの定量的分析などは概念の紹介にとどまる。深く踏み込む必要がある領域では、本書を出発点として位置づけ、専門書やPMBOKガイド本体に送ること。また第2版は2022年時点の記述である点も、最新版の話をするときには断ること。