# 多様性を受け入れ、認め、活かす時代 〜おわりに〜 **中心主張**: 日本人がプロジェクトマネジメントに違和感を抱きやすいのは、均質的な能力でのグループ活動に慣れ、「言わなくても分かる」前提で明文化や共通認識の基準づくりをそれほど求められてこなかったからである。しかしグローバル化と変化の速さの中で多様化は避けられず、一人が担う仕事や役割も増えている。だからこそ、プロジェクトマネジメントを知っているかどうかが、これからの仕事のパフォーマンスに大きく影響してくる。 **実践指針** - 多様なメンバーと結果を出す場面では、まずチームとしてメンバーの違いを受け入れるところから始めよ。過去の経験や体験、価値観が人それぞれ違うことを前提にする。 - チームを統合する場面では、「統一すべき核となるものは何か」と「どこに柔軟性を持たせるのか」を切り分けよ。得意分野も欠点も考え方も違うメンバーを、全部そろえようとするな。 - 「言わなくても分かる」が通じない相手と働く場面では、共通認識を持つための基準をつくり、明文化せよ。日本国内の均質的な集団を前提にした暗黙の運用を持ち込まない。 - プロジェクトを進める場面では、それを「グループとしての集団行動」と同じものとして扱うな。プロジェクトの進め方は集団行動とはまったく違う。 - 仕事を円滑に進めたい場面では、視点や基準の多様性を受け入れ、国際的に標準とされているプロジェクトマネジメントの体系的な考え方を土台として使え。日本人にとって、これは大変有効な手段の一つである。 **根拠となる事例・考え方** 著者は、日本には「人に迷惑をかけてはいけない」という考えが強く、阿吽の呼吸のように「言わなくても分かる」という考え方があると指摘する。そのため日本人は海外の人と比べて、他の人と共通認識を持つための基準をつくることや、明文化することがそれほど求められてこなかった。集団行動の教育を徹底的に受け、みんなが均質的な能力で行うグループ活動に慣れている——だからこそ、責任感の強い人であればあるほど、プロジェクトマネジメントに違和感を抱きやすい。 一方で、グローバル化し変化の早い現代において、多様化は避けることができない。一人ひとりがやるべき仕事や役割が増加し、仕事の内容も複雑になっている。著者自身、これまで10カ国以上の人たちとプロジェクトやチームの仕事をしてきた経験から、チームとして結果を出すにはメンバーの違いを受け入れるところから始める必要があったと振り返る。「アリとキリギリス」の章でも述べたとおり、人それぞれ過去の経験や体験、価値観が違うからである。 そして、もう一つ大事なこととして「得意分野や欠点、考え方も違う多様なメンバーを、どこに柔軟性を持たせるのか、統一すべき核となるものは何かを見極め、チームとして統合させること」を挙げる。この点において、プロジェクトの進め方はグループとしての集団行動とはまったく違う。チームとして仕事を円滑に進めるには、視点や基準の多様性を受け入れる必要があり、そのためにも国際的に標準とされているプロジェクトマネジメントの体系的な考え方を知ることは、日本人にとって大変有効な手段の一つである、と本書は締めくくられる。 なお、署名は「2017年8月 飯田剛弘」(初版執筆時の日付がそのまま残っている。第2版の発行日は2022年11月9日)。 **キーワード** - **多様性の受容**: 得意分野・欠点・考え方が異なるメンバーの違いを、まず受け入れること。チームとして結果を出す出発点。 - **統一すべき核と柔軟性**: 多様なメンバーを統合する際に見極めるべき2軸。すべてを統一するのでも、すべてを個別最適にするのでもない。 - **明文化と共通認識の基準**: 「言わなくても分かる」が通じない環境で、共通理解を成立させるための手段。 - **集団行動とプロジェクトの違い**: 均質な集団の同調的行動と、多様なメンバーを役割と計画で統合するプロジェクト運営は別物である。 --- ## 巻末の未要約パート(存在のみ報告) - **謝辞**(2017年8月 飯田剛弘): 秀和システムの編集担当者、プレスコンサルティングの樺木宏氏、小幡一郎氏、川野和之氏、石井洋一氏、リードプラスの杉崎正之氏、FAROの日本チーム、家族(妻・麻衣、息子・煌志)への謝辞。 - **著者プロフィール**: 飯田剛弘(いいだ・よしひろ)。ファロージャパン株式会社シニアマーケティングマネージャー。マーケティングポータルサイト『ビジネスファイターズ』運営。愛知県生まれ、南オレゴン州立大学卒業。インサイトテクノロジー社でインド企業とのソフトウェア共同開発プロジェクトに従事(約10名のインド人チームと4年間で8つのプロジェクト)。PMP取得、PMI標準『プロジェクト・マネジャー・コンピテンシー開発体系 第2版』を出版翻訳。 - **奥付**: 『PMBOK対応 童話でわかるプロジェクトマネジメント[第2版]』2022年11月9日 第1版第1刷、著者 飯田剛弘、発行所 株式会社秀和システム、ISBN978-4-7980-6862-6 C3055、カバーデザイン 大場君人。 - 参考文献の独立した一覧は、この分冊内には見当たらなかった。