# 第6章 長靴を履いた猫 〜メンバーと仲良くなる「信頼構築術」〜 扱う童話は「長靴を履いた猫」。猫をベテランのプロジェクトマネージャー、遺産として猫だけを受け取った三男を新しいご主人様(=メンバー/クライアント)に見立て、信頼関係をゼロから積み上げる手順を9幕で追う。 **中心主張**: プロジェクトを円滑に進めるには、メンバーとの信頼関係が必要不可欠であり、それは偶然生まれるものではなく設計できる。第一印象、自己開示、共通点探し、与え続けること、接触回数、相手の感情への配慮、当事者意識づけ、そして約束の履行という順番で意図的に積み上げていく。 ## 実践指針 - **メンバーやクライアントと初対面する場面では**、話す内容より先に見た目・服装・身だしなみと声のトーンを整えよ。第一印象は後の評価の基準になる(初頭効果)。 - **相手が心を開いていない場面では**、自分から先に自己開示せよ。相手が自分について知らないことを伝えて「開放の窓」を広げると、相手のガードが下がる。 - **相手の良い点を知っている場面では**、それを本人に伝えてフィードバックせよ。相手の「盲点の窓」を小さくすることも開放の窓を広げる手段になる。 - **打ち解けたい相手がいる場面では**、共通の話題や共通点を探せ。話し方や呼吸のペースを合わせ(ペーシング)、動作や姿勢を合わせ(ミラーリング)、相手の言葉を繰り返す(バックトラッキング)。 - **相手の提案が自分の常識と食い違う場面では**、「ありえない」「無理」と即断せず「ありえるかもしれない」と意図的に思え。否定した瞬間に相手はそれ以上考えることをやめる。 - **相手との関係を築きたい場面では**、見返りを期待せずギブを繰り返せ。見返りを期待した瞬間に「なんでやってくれないの?」が生まれ、関係が悪化する。 - **何かを与えられた場面では**、必ず「ありがとう」を返せ。お礼を返される人を嫌う人はいない。 - **関係を深めたい場面では**、接触回数そのものを増やせ(単純接触効果)。ミーティングや飲み会など、何でも話せる場をつくる。 - **相手の機嫌が明らかに悪い場面では**、背景も理由も分からないまま感情的に応じるな。淡々と必要最低限の会話にとどめ、傾聴・相槌・共感でその場のコミュニケーションの目的だけを達成せよ。 - **メンバーの動機付けを行う場面では**、一人ひとりに関心を持ち、個人目標を決め、それがプロジェクト成功にどう貢献し、本人がどう成長できるのかを話し合え。目標の共有だけでなく、PM自身の言葉で思いを語ることも大切。 - **約束をした場面では**、必ず果たせ。約束していなくても他の人から期待されていれば、それは約束しているのと同じ。進捗会議で決まったアクションプランはチーム間の暗黙の約束である。 ## 根拠となる事例・考え方 猫は最初に自分の身だしなみを確認し、抑えたトーンで三男の目を見て話しかける(メラビアンの法則:視覚55%/聴覚38%/言語7%)。次に自ら亡き父への思いを語り(自己開示)、三男が知らない父の一面を伝えて開放の窓を広げる。三男が足を組めば猫も足を組み、話すペースを合わせて相槌を打つ(ラポール形成)。 袋と長靴を求めた場面では、三男は「どうせ猫と僕の考え方は違う」と決めつけかけるが、父の教え「ありえるかもしれない」を思い出して受け入れる。以降、猫は獲物を捕まえては〈カラバ公爵〉からの贈り物として王様に届け続ける(見返りを期待しないギブ/接触回数の増加)。王様の機嫌が悪い日には反論も説得もせず、傾聴と共感だけで場を収める。最終幕では王様の期待に応える段取りを徹底的に行い(村人への通告、城の調達)、約束を果たすことで信頼関係を完成させる。 ## キーワード - **初頭効果**: 初対面で感じた印象を基準に人を評価してしまう心理。 - **メラビアンの法則**: 話をしていて聞き手がよく分からないと感じた時、言語情報7%・聴覚情報38%・視覚情報55%の比率で受け止め方が決まるという法則。 - **ジョハリの窓**: 「自分が知っているか」「他人が知っているか」の2×2で開放/盲点/秘密/未知の4つに分類するモデル。自己開示とフィードバックで開放の窓を広げる。 - **ラポール**: 親密な信頼関係。ペーシング(ペースを合わせる)、ミラーリング(動作を合わせる)、バックトラッキング(相手の言葉を繰り返す)で築く。 - **単純接触効果**: 同じ対象に繰り返し接するほど好意度が高まる現象。 - **当事者意識**: メンバーが自分の活躍とプロジェクト成功を結びつけて捉えている状態。個人の動機付けから生まれる。 ## 章末まとめ(原文の「まとめ」ページ) - 第一印象を良くして、良い評価をもらう - 聞き手が何を知っていて何を知らないかを把握した上で話す - 共通点を見つけ、相手に合わせることで関係を構築する - 「ありえるかもしれない」と信じることで、多くの人とより良い関係を構築する - 人間関係は与え続けることでうまくいく。ただし見返りを期待しないことが大前提 - ミーティングや飲み会など、お互いを知る機会を増やし、何でも話せる場をつくる - 相手の感情・立場・状況を分かろうと努力し、何をすればコミュニケーションの目的を達成できるか考える - メンバー一人ひとりに関心を持ち、個人の動機付けを行い、当事者意識を持ってもらう - 期待に応え、約束を守り、責任を果たすことで信頼関係を築く