# 第3章 桃太郎 〜チームで目的を達成する「仲間術」〜 (part2では第1幕〜第7幕まで。**この章は part3 に続く**。第7幕の作戦会議・行動計画の具体化の途中で分冊が切れている) ## 中心主張 桃太郎の鬼退治は、**権限も強制力も持たないプロジェクトマネージャーが、どうやって人を動かしてチームをつくるか**の物語である。桃太郎は「村人を救わなければならない」という内発的動機で立ち上げ、村人には不安を素直に語って連帯感を生み、イヌ・サル・キジにはきびだんご(外発的動機付け)で最初のスイッチを入れ、その効果が切れかけたところで「相手が価値を感じるもの(財宝・村人からの尊敬)」を交換材料として提示し、協力を引き出した。動機付けは一度では持たず、段階を踏んで設計するものだと示している。 ## 実践指針 - **やったことのないプロジェクトを立ち上げる場面では**、不安を隠さず「不安なのは自分1人ではない」と関係者と共有せよ。懸念や課題を共有し、相談し、支援を求めることが連帯感と成功につながる。 - **メンバーが不安を抱えていそうな場面では**、まず一人ひとりに声をかけ、プロジェクトについてどう感じているかを聞け。信頼関係の構築は本音で話し合うところから始まる。 - **チームのやる気を引き出したい場面では**、外発的動機付け(報酬・評価・罰)は効果が早く出るが一時的だと理解し、時間が経って薄れる前に次の動機付け(少し先を意識した刺激)を用意せよ。 - **メンバーの内発的動機を探る場面では**、「どういったものを求めているのか」「どうしてそう感じるのか」を傾聴せよ。達成すべきことと個人の価値観を突き合わせ、達成がどう本人の成長・貢献につながるかを話し合え。 - **権限がないのに協力を得たい場面では**、コーエン&ブラッドフォードの影響力モデルに従い、相手にとって価値のあるもの(カレンシー)を先に渡し、価値の交換で人を動かせ。強制ではなく交換である。 - **キックオフの場面では**、各メンバーと積極的にコミュニケーションを取り、プロジェクトの成否を決めるステークホルダーが何を大切にしているかを理解せよ。 - **役割を割り当てる場面では**、WBSをメンバー全員に見せて、得意分野・適性・本人の希望を聞いた上で役割を「与え合え」。押し付けた役割は当事者意識を生まない。 - **作業を分ける場面では**、単に分割するのではなく「担当者みんなができることをやって、助け合ってその作業を完遂する」形にせよ。責任者と権限をハッキリさせ、迷ったら必ず相談する導線を明示せよ。 - **役割分担を設計する場面では**、作業目的から逆算して人を当てよ(例:鬼の位置の偵察は、エリアを均等に割るより、上空のキジ・木に登るサル・地上のイヌと視点の高さで分ける方が有効)。 - **チームに情報共有が乏しいと感じる場面では**、崩れる前に定例会議という場をつくれ。日常業務の忙しさに任せると共有は起こらないので、半強制的に話し合う場を設けるのが有効。 - **定例会議を運営する場面では**、①原則全員参加 ②目的・アジェンダ・期待成果を事前に明確化 ③終了時間厳守(早く終われば即終了)④互いに報告し合いやる気リズムをつくる ⑤前回の約束の進捗と課題を報告 ⑥困っている人を支援し「自分ごと化」する ⑦誰がいつまでに何をやるかを明確化 ⑧議事録を直後に共有し次回のTODO兼アジェンダにする、を守れ。 - **行動計画を書く場面では**、NGワード(管理する・検討する・徹底する・しっかり等)を使うな。「キジが島から100メートルの距離に近づいたら、上陸予定の海岸周辺50メートルに鬼がいないかを上空から確認する」のように、誰が・いつまでに・何をするかと、そこから生まれる**成果物**を書け。 ## 根拠となる事例・考え方 桃太郎は定年退職した元PMのおじいさんに育てられた優秀なPMという設定。鬼退治プロジェクトを企画するが、おじいさん・おばあさんは「やったことがない」ことに不安を示し、止めはしないが「ステークホルダーの村人に相談しよう」と促す。桃太郎は村人一人ひとりに丁寧に説明を続け、村人は「鬼から報復されるかも」「成功する気がしない」という不安を口にしながらも次第に共感し、舟の調達を手伝うなど支援を始めた。**不安の共有が連帯感に変わる瞬間**が第1幕の要点である。 第2幕で桃太郎は「絶対にプロジェクトを成功させなければいけない!」という使命感を持つ。本文はこれを**内発的動機付け**(村を救う信念、おじいさん・おばあさんへの感謝と期待、自分の強さを証明したい気持ち)と整理し、「桃太郎は自ら考え、行動した。言われたわけではない」と強調する。刀の調達ときびだんごの準備を依頼し、「明日やれる範囲で実行とコントロールだ」と段取る。 第3幕、イヌ・サル・キジはきびだんごで仲間になる。本文はこれを**外発的動機付け**と定義し、「効果はすぐ現れるが一時的」と釘を刺す。実際、道中で3匹のやる気は薄れ、桃太郎は「悪い鬼をやっつけたら、鬼たちが持っている宝物も手に入るよ」と少し先を意識した動機付けを追加した。**再動機付けは回を重ねるほど難しくなり、刺激の与え方とタイミングが重要**になる。 第4幕、桃太郎は「僕にはみんなに強制的にやってもらう権限はない」と自覚し、ステークホルダー分析を行う。「イヌ、サル、キジくんたちは何を欲しがっているのだろう」「各メンバーにとって価値のあるものとは何だろう」と考え、財宝・村人からの尊敬・感謝という**カレンシー**を提示した。本文はこれを**コーエン&ブラッドフォードの影響力モデル**として明示し、補助図表「人を動かすために意識すべき6つの法則」(①味方になると考える ②目標を明確にする ③相手の世界を理解する ④カレンシーを見つける ⑤関係に配慮する ⑥目的を見失わない)を置く。 第5幕はWBSと役割分担。桃太郎はWBSを見せて希望を聞き、キジ(上空からの偵察)=情報収集、サル(知恵・全体俯瞰)=作戦を練る、イヌ(強力な歯と素早い動き)=戦う、と本人の希望と適性に沿って責任者を任命した。図表「桃太郎が作成したWBSのたたき」は 鬼退治 → 1.0情報収集/2.0作戦を練る/3.0戦う の3階層。図表「役割分担」はP(主責任=責任者)/S(副責任=担当者)の記号で、1.情報収集=責任者キジ、2.作戦を練る=責任者サル、3.戦う=責任者イヌ、と各作業に全員がSで関与する形を示す。**責任者は決めるが、他は全員が支援に回る**のがポイント。 第6幕は舟の上での作戦会議。桃太郎は「役割と責任を明確にしたのに、共通認識が持てていない」と気づき、半強制的に全員参加の会議を開く。目的(鬼ヶ島到着後の行動計画の確認と修正)と会議時間(30分)を冒頭で宣言し、サルの発表→キジの報告→質問確認、と回した。第7幕では「上陸前に島の状況を徹底的に把握します」というキジの説明を止め、「具体的に何を把握するかが分からない」と指摘し、成果物ベースの具体化(『地図情報の取得』が期待される成果)へ導いた。 ## キーワード - **内発的動機付け**:本人の内側から生まれる動機(達成感・誇り・信念・成長)。桃太郎の「村を絶対に救うぞ!」がこれ。持続性が高い。 - **外発的動機付け**:外部からの働きかけによる動機(評価・報酬・強制・懲罰)。きびだんごがこれ。効果は速いが一時的で、再動機付けが必要になる。 - **カレンシー**:相手にとって価値のあるもの。現場の状況報告や期限内に仕事を終える信頼など、日頃から相手に渡しておくもの。 - **コーエン&ブラッドフォードの影響力モデル**:権限のないリーダーが「価値の交換」で人を動かすための考え方。6つの法則で構成される。 - **ステークホルダー分析**:プロジェクトの成否を決める関係者が何を大切にし何を求めているかを把握する活動。 - **ステークホルダーマネジメント**:関係者の期待や懸念を傾聴し、信頼関係を維持しながらプロジェクトを進める活動。 - **WBS(Work Breakdown Structure)**:やるべきことを階層に分解した図。メンバー全員に共有して役割の希望を募る材料になる。 - **説明責任者/作業担当者(P/S)**:Pは主責任=成果に説明責任を負う責任者、Sは副責任=担当者。1作業1責任者、他は支援に回る。 - **定例会議**:情報共有を半強制的に起こす場。議事録が次回までのTODOリスト兼アジェンダになる。 - **行動計画のNGワード**:「管理する/検討する/徹底する/しっかり/可能な限り」など、行動が曖昧・頭で考えるだけ・程度が曖昧な表現。成果物が定まらないため計画倒れの原因になる。 ## 分冊の切れ目 第7幕の作戦会議の途中、桃太郎が「『上陸』という成果のあとには『地図情報の取得』が期待される成果だよね。この感じで、他の作業も、みんなで成果物を意識して具体的な行動計画をつくろう」と述べ、「やるべきことに含めてはいけないNGワード」の教訓と図表で part2 が終わる。**鬼ヶ島上陸以降の実行フェーズは part3 に続く。**