# 第2章 ウサギとカメ 〜みんなが同じ方向を向ける「ゴール設定術」〜
(part2内で第1幕〜第9幕まで完結。扱う童話は「ウサギとカメ」)
## 中心主張
ウサギが負けたのは足が遅かったからでも油断したからでもなく、**見ていた対象が「ゴール」ではなく「相手(カメ)」だったから**である。ウサギの目的は「カメより速く走れると証明すること」にすり替わり、カメを引き離した時点で目的が達成されて安心し、寝てしまった。カメはSMARTの法則でゴールを明確に定義し、前提条件と制約条件を洗い出し、「やらないこと」まで具体化していたから、遅くても着実に勝った。目標設定の巧拙がプロジェクトの成否を決める。
## 実践指針
- **目標を立てる場面では**、SMART(Specific/Measurable/Attainable/Relevant/Timely)で書き、特に「何を」は簡単な動詞でシンプルに表現せよ。曖昧な目標は「発言者」と「聞き手」で解釈が割れる。
- **他人から目標を与えられそうな場面では**、自分たち(チーム)で設定し直せ。他人から言われた目標はやらされ感を生み、自発的に決めた目標だけが納得感と推進力を生む。
- **メンバーのやる気が上がらない場面では**、目標が「自分で立てたものか」「曖昧でないか」「非現実的でないか」「目的が見えているか」「行動が明確か」「資源が足りているか」「目先の仕事に追われていないか」を点検せよ(=目標が実行されない7つの原因)。
- **計画を立てる前には**、自分が今どんな情報を持ち、何が分かっていて何が分かっていないかを客観的に評価せよ。「時間がなかった」「情報がなかった」は計画を渋る言い訳になりやすい。
- **不確実性が高くて計画できないと感じる場面では**、完全な計画は不可能と理解した上で、大枠とグレーゾーンを把握し、根本的に変わる場合は早い段階で問題を特定・対応することに注力せよ。
- **優先順位を決める場面では**、「やること」だけでなく**「やらないこと」を具体的に決めよ**。「寝ない」ではなく「1時間以上休まない」のように、程度まで具体化しないと判断できない。
- **計画に潜むリスクを洗う場面では**、無意識に置いている前提条件(「競争中にライオンは現れない」等)を文書化し、妥当性を繰り返し確認せよ。認識さえされていない前提こそが最大のリスク。
- **制約条件(守らないといけないルール)を受け取った場面では**、その根拠を確認せよ。「本当に長距離なのか」「どれくらいの距離を意味しているのか」を問い直し、予算や完成日が根拠なく独り歩きしないようにせよ。
- **どんな作業にも**「いつ終わるのか」を明確に答えられるようにせよ。締め切りのない仕事は後回しになる。会議も終了時間を決めれば必要以上に時間を使わない。
- **チームで進める場面では**、「誰が、いつ、どのような情報を、どのように伝えるのか」を計画時に決めよ。人数が増えるほど1対1のコミュニケーション経路は急増する。
- **失敗を振り返る場面では**、「なぜ?」を繰り返して真因に至り、次に「何?」を繰り返して対策を出せ。「なぜ間違えたのか」(個人の意識)ではなく「何が間違えさせたのか」(仕組み・システム)に視点を向けよ。
## 根拠となる事例・考え方
新人PMのウサギとベテランPMのカメが山の頂上を目指して競争する。カメは「自分で設定したゴール」を持ったことでモチベーションと推進力を得た(他人に言われたわけではない)。カメは走り出す前に「目的地までの最短はこの道か」「新しい道はできていないか」「雨が降ったら以前の道は使えるか」「キツネ(天敵)は今もいるか」と、**自分が何を知らないかを確認しながら**前進した。
ウサギは第4幕で「進捗は、と言うか、どこにいるんだ?」「ゴールまでどれくらいあるのかな?」と、**見積りをしていなかった**ことに気づく。そして「まぁいいや」と休んで眠り、起きる時間も決めていなかったため寝過ごした。第7幕でウサギは「誰かが僕に、随時カメさんの状況を教えてくれたら良かったのに」と言うが、本文はこれを一対一の勝負であり、チームで対決していたわけではないと切り捨てつつ、**タイムリーな進捗報告があれば対策できた**というコミュニケーション不足の教訓に転換している。
第8幕でカメはウサギに「なぜ寝すぎたのか」を問い、「油断したから」→「勝てると思ったから」→「スタートしてすぐ僕の方が速かったから」→「ゴールを見ていなかったから」と、なぜを繰り返して真因(ゴール設定の欠如)に到達させる。第9幕でウサギは「僕の目的が間違っていたので、スタート直後に目的を達成した気分になってしまった」と自ら結論する。
補助図表は3枚。**SMARTとは**(Specific=具体的で分かりやすい/Measurable=計測可能で数字になっている/Attainable=達成可能で現実的/Relevant=プロジェクトでなすべきことや成果に特化/Timely=期限が明確)、**目標が実行されない原因**(自分で立てた目標でない/曖昧/非現実的/目的が分からない/行動が不明確/資源不足/目先に追われる)、**一対一のコミュニケーションの数**(人数が増えると経路が爆発する図)。
## キーワード
- **SMARTの法則**:目的地のゴールを誰でも分かる形にするための5要素の頭文字(Specific/Measurable/Attainable/Relevant/Timely)。全員が共通認識を持ち、同じ方向を向くための道具。
- **目的と目標の区別**:目的は「なぜやるか(山の頂上まで走る)」、目標は「何をどこまで(10キロ先の頂上に1秒でも早く到達する)」。目的を見失うと目標だけが独り歩きする。
- **前提条件**:計画時に無意識に「成り立っている」としている仮定(例「ライオンは現れない」)。認識されない前提はリスクとして管理できず、プロジェクト失敗の大きな要因になる。
- **制約条件**:どうしても守らないといけないルール(予算・完成日・距離など)。根拠を確認せずに受け入れると数字が独り歩きする。
- **やらないことの明確化**:「やるべきこと」と対にして具体的に定義すること。程度(何時間・何回)まで決めて初めて判断基準になる。
- **デッドライン(締め切り)**:作業がいつ終わるのかを明示すること。会議を含むあらゆる作業に設定し、スケジュール全体のスピードを上げる。
- **「なぜ」と「何」の反復**:なぜを繰り返して真因を特定し、何を繰り返して対策を出す手法。「なぜ間違えたのか(人)」ではなく「何が間違えさせたのか(仕組み)」に視点を向けるのが要点。
- **5W1H**:目標を「いつまでに◯◯から◯◯にする」と表現するための枠組み。SMARTと併用する。
## 章末まとめ(原文「まとめ」ページより要点)
自分たちで目標を設定し「絶対、達成するぞ!」の意気込みで臨む/SMARTで明確な目標を設定し全員が同じ方向を向く/自分の情報・知識・経験を評価し、必要な情報を集めて実効性の高い計画を立てる/「やらないこと」を具体的に決めて必要不可欠な「やるべきこと」に集中する/前提条件を徹底的に洗い出し、制約条件とその根拠を把握することがリスク管理の第一歩/会議を含めあらゆる作業に「いつ終わるのか」を明確にする/誰がいつどのように情報を伝えるかをハッキリさせる/「なぜ」と「何」を繰り返して本質的にやるべきことを明確にする/失敗の道に向かわないために目的と目標の設定に全力で取り組む。