# 第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる > 扉ページはpart3のp.20(Kindle位置74%)。分冊3はこの夜の途中、小見出し「無意味な人生に『意味』を与えよ」の冒頭(p.50、93%)で終わる。**(part4に続く)** > 収録された小見出し: 過剰な自意識が、自分にブレーキをかける/自己肯定ではなく、自己受容/信用と信頼はなにが違うのか/仕事の本質は、他者への貢献/若者は大人よりも前を歩いている/ワーカホリックは人生の嘘/人はいま、この瞬間から幸せになることができる/「特別な存在」でありたい人が進む、ふたつの道/普通であることの勇気/人生とは連続する刹那である/ダンスするように生きる/「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てよ/人生最大の嘘/無意味な人生に「意味」を与えよ(冒頭のみ) ## 中心主張 共同体感覚は「自己受容 → 他者信頼 → 他者貢献」という円環構造で成り立つ。ありのままの自分を受け入れられるからこそ無条件に他者を信頼でき、他者を仲間と見なせるからこそ貢献でき、貢献によって「わたしは誰かの役に立っている」と実感できて再び自分を受け入れられる。そして幸福とは他者からの承認ではなく、この主観的な「貢献感」そのものである。さらに人生は線ではなく連続する刹那であり、過去にも未来にも意味を求めず「いま、ここ」を真剣に生きること以外に生き方はない。 ## 実践指針 - 自意識にブレーキをかけられる場面では、「わたし」への執着を「他者への関心」に切り替えよ。自分がどう見られるかを気にするのは自己中心的であり、他者を仲間と見る視点に移すことでブレーキは外れる。 - 60点の自分を前にしたときは、「本当は100点なのだ」と暗示をかける自己肯定ではなく、60点をそのまま受け入れたうえで「100点に近づくにはどうすればいいか」を考える自己受容をせよ。 - 変えられないものに悩んでいる場面では、「なにが与えられているか」ではなく「与えられたものをどう使うか」に注目せよ。変えられるものと変えられないものを見分ける知恵を持ち、変えられるものについては変えていく勇気を持つ。 - 他者との関係を築くときは、担保や条件を求める「信用」ではなく、無条件に信じる「信頼」を選べ。裏切るかどうかは他者の課題であり、あなたはただ「わたしがどうするか」だけを考える。 - 「裏切られたらどうする」と怯える場面では、いま裏切られることばかり心配していることに気づけ。信頼することを怖れていたら誰とも深い関係を築けない。関係が深くなるほど喜びも大きくなる。 - 仕事を考える場面では、金銭を稼ぐ手段としてではなく、労働を通じた他者貢献として捉えよ。「わたしは誰かの役に立っている」という実感が、共同体へのコミットと存在価値の確認になる。 - 他者貢献を考えるときは、自己犠牲と混同するな。貢献は他者のためではなく、「わたし」の価値を実感するためになされる。むしろ「わたし」を捨てて誰かに尽くすことではない。 - 特別になろうとする場面では、「普通であることの勇気」を持て。特別によくあろうとするのも特別に悪くあろうとするのも、他者の注目を集めるという同じ目的(安直な優越性の追求)に立っている。普通であることは無能であることではない。 - 人生を計画する場面では、山頂に到達するまでを「仮の人生」と見なす登山型の発想を捨て、ダンスのように「いま、ここ」を充実させよ。目的地は存在せず、踊っている過程そのものが人生である。 - 過去や未来に意味を求めそうになったら、「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てよ。過去も未来も存在しない。真剣に生きるとは深刻になることではなく、いまできることを真剣かつ丁寧にやることである。 - 「本当はこれがしたいけど、条件が整ったらやろう」と考えている場面では、それが人生を先延ばしにする生き方だと気づけ。人生最大の嘘は「いま、ここ」を生きないことである。 ## 根拠となる論理・たとえ話 **銀行の融資**:返済可能な分だけ担保をとって貸すのが「信用」。担保のことなど考えず無条件に信じるのが「信頼」。対人関係の基礎は後者である。 **浮気を疑う恋愛**:「他者は敵である」というライフスタイルで相手を見れば、何気ない言動も連絡がとれない時間もすべて「浮気の証拠」に映る。疑いの目を向けているかぎり、深い関係は築けない。 **10人のうち1人**:10人いれば1人はあなたを嫌い、2人は親友になり、残り7人はどちらでもない。嫌う1人だけを見て「世界」を判断するのは、人生の調和を欠いた生き方である(吃音・赤面症・ワーカホリックも、全体の一部分だけを見て全体を評価する同じ構造)。 **ワーカホリック**:仕事を口実に他の責任を回避する生き方であり、人生の嘘。仕事は人生のタスクのごく一部でしかない。「行為のレベル」でしか自分を受け入れられない人は、働けなくなったとき深刻なダメージを受ける。 **ソクラテスのパラドクス**:「誰ひとりとして悪を欲する人はいない」。問題行動に走る子どもも、暴行や窃盗でさえ本人にとっては「善(=ためになること)」の遂行である。だからほめる/叱るではなく、勇気づけが必要になる。 **キーネーシスとエネルゲイア**:始点と終点があり、目的地に効率よく速く到達することが望ましい運動がキーネーシス(動的)。「いまなしつつあることが、そのままなしてしまった」となる運動がエネルゲイア(現実活動態)。ダンスも旅もエネルゲイアであり、人生もそう捉えるべき。ヘリコプターで山頂に5分だけ滞在しても登山にはならない。 **点線と線**:チョークで引いた実線も、拡大鏡で覗けば小さな点の連続にすぎない。線に見える人生は、実は連続する刹那である。過去を「線」の物語として語るのは免罪符であり、人生最大の嘘。 **劇場のスポットライト**:会場全体に蛍光灯がついていれば客席の最前列も最奥も見渡せるが、自分に強烈なスポットライトを当てれば過去も未来も見えなくなる。それが「いま、ここ」を真剣に生きる状態。 ## キーワード - **自己受容**:できない自分をありのままに受け入れ、できるようになるべく前に進むこと。「わたしは強い」と自らに嘘をつく**自己肯定**とは明確に異なる。ニーバーの祈り(変えられないものを受け入れる冷静さ、変えられるものを変える勇気、その違いを見分ける知恵)に対応する。 - **他者信頼**:他者を信じるにあたって一切の条件をつけないこと。担保を求める「信用」の対義。裏切るかどうかは他者の課題(課題の分離)。 - **他者貢献**:仲間である他者に対してなんらかの働きかけをすること。自己犠牲ではなく、「わたし」の価値を実感するためになされる。 - **貢献感**:「わたしは誰かの役に立っている」という主観的な感覚。目に見える貢献でなくてよい。**幸福とは貢献感である**というのがアドラー心理学の答え。貢献感があれば他者からの承認は不要になる。 - **アドラー心理学の目標**:行動面の目標は①自立すること②社会と調和して暮らせること。それを支える心理面の目標は①わたしには能力があるという意識(=自己受容)②人々はわたしの仲間であるという意識(=他者信頼・他者貢献)。 - **安直な優越性の追求**:努力によって「特別によくあろう」とするのではなく、問題行動によって「特別に悪くあろう」とすること。不登校・リストカット・非行なども、注目を集めるための同じ目的に立つ。 - **普通であることの勇気**:「普通の自分」を受け入れる勇気。普通であることは無能であることではない。わざわざ自らの優越性を誇示する必要がない状態。 - **連続する刹那**:人生は線ではなく点の連続。過去も未来も存在せず、「いま、ここ」にしか生きられない。 - **キーネーシス/エネルゲイア**:目的地に到達するための運動と、「いまなしつつあることが、そのままなしてしまった」となる運動。人生は後者。 - **人生最大の嘘**:「いま、ここ」を生きないこと。ありもしない過去と未来にばかり光を当て、人生を先延ばしにすること。