# 導入対話(本文冒頭・無題/目次前の哲人と青年の出会い)
書名: 嫌われる勇気 ― 自己啓発の源流「アドラー」の教え
著者: 岸見一郎・古賀史健/出版社: ダイヤモンド社
## 中心主張
世界は本来どこまでもシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる。世界が複雑で混沌として見えるのは世界の側の性質ではなく、「あなた」がサングラス越しに世界を見ているからであり、変えるべきは世界ではなく自分の主観である。したがって問題は「世界がどうであるか」ではなく「あなたがどうであるか」であり、必要なのは知識ではなく変わる勇気である。
## 実践指針
- 「現実が複雑で自分にはどうにもならない」と感じたときは、世界の複雑さを分析するのをやめ、自分がどんな意味づけをして世界を見ているかを疑え。
- 「大人になれば世界の本性が見えてくる」と語りたくなったら、それは自分が可能性を諦めるための説明になっていないか点検せよ。
- 変われない理由を探す場面では、能力や環境ではなく「変わる勇気を出していないだけではないか」を最初に検討せよ。
- 誰かの人生観・幸福観に反論したくなったら、頭ごなしに否定する前に一度その論に乗り、その上で誤りを具体的に指摘するという順序をとれ。
- 「人は変われるか」を議論するときは、抽象的な人間一般の話ではなく「わたし自身が変われるか」に引き寄せて考えよ。
## 根拠となる論理・たとえ話
- **井戸水の18度**: 井戸水は年間を通じてほぼ18度で一定という客観的事実があるのに、夏は冷たく冬は温かく感じる。錯覚ではなく、その時の「あなた」にとっての現実である。主観的な世界に住む以上、自分の主観から逃れることはできない。
- **サングラス**: 世界が暗く見えるのはサングラスをかけているから。外せば強烈にまぶしく目を閉じたくなるかもしれない。それでも外す勇気があるか、が問われている。
- 青年は「世界は矛盾に満ちた混沌であり、大人になれば醜い現実が見えてくる」という立場から、哲人の「世界はシンプル」「人は変われる」というテーゼに反論するために書斎を訪れる。この構図が全編の対話形式を規定している。
- 哲人はギリシア哲学の徒でありながら「もうひとつの哲学」=アドラー心理学を人生の真理として提示し、青年を対話に誘う。
## キーワード
- **主観的な世界**: 客観的な世界そのものではなく、自分が意味づけを施した世界に人は住んでいるという前提。アドラー心理学の出発点。
- **勇気**: 変わるために必要なもの。能力や環境ではなく、これが不足しているために人は変われない、という本書全体を貫く概念。
- **もうひとつの哲学**: 哲人がギリシア哲学と並んで人生の真理とみなすアドラー心理学の呼び名。
## メモ
本書は「青年と哲人の対話篇」という物語形式で、フロイト・ユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という問いへの答えとしてまとめた一冊。全体は第一夜〜第五夜の五夜構成。