# 用語集
本書特有の概念・キーワード。章番号は overview.md の章インデックスに対応する。
## 雑談の定義と土台
- **dialogue(対話)**: 単なる情報のやりとりではなく、話す側と聞く側がお互いに理解を深めながら、行動や意識を変化させるような創造的コミュニケーション。世界の一流が交わしているのはこれであり、日本的な「雑談」ではない。→ はじめに
- **雑談の5つの意図**: ①状況を「確認する」②情報を「伝える」③情報を「得る」④信用を「作る」⑤意思を「決める」。口を開く前にこのどれを狙うかを1つ選ぶ、本書全体を貫く設計の骨格。→ はじめに
- **ラポール**: お互いの心が通じ合い、穏やかな気持ちでリラックスして相手の言葉を受け入れられる関係性。雑談の第一の到達点で、心理学的な条件は「信頼」「信用」「尊敬」の3つ。→ 第1章
- **ラポールの3原則**: 相手が①何を大切にしているか ②何を正しいと思っているか ③何を求めているか、を知ること。ラポールを作るための具体的な着眼点。→ 第3章前半
- **無条件の肯定的関心**: アメリカの心理学者カール・ロジャースの概念。相手の話を良し悪しや好き嫌いで判断せず「なぜそう考えているのか」を肯定的に知ろうとする姿勢。→ 第1章
- **empathy(エンパシー)**: 「共感」と訳されるが厳密には、自分と異なる考え方や価値観を持つ相手が何を考え、どう感じているかを想像する能力。隠れた意図を汲み取り相手の感情に合わせることまで含む。→ 第1章
- **本質的な会話**: 天気の話や世間話ではなく、相手をしっかり理解するための深い会話。本書が言う「雑談」の中身そのもの。→ おわりに
- **雑談に必要な3要素**: 「好奇心」「知識」「経験」。ここでの好奇心とは、相手の360度に興味を持ち、人格・考え方・好み・社会的立場までを含めて全人的に関心を持つこと。→ おわりに
## 日本と世界の対比
- **ハイコンテクスト社会/ローコンテクスト社会**: コンテクストは空間的・時間的・社会的な「場面」「文脈」「背景」を指す心理学の概念。日本は民族の多様性が小さく「以心伝心」「空気を読む」が成立するハイコンテクスト社会で、自己開示の必要がなかった。欧米はローコンテクストで、言葉でストレートに情報交換する必要がある。→ 第1章
- **トランザクション文化/リレーション文化**: アングロサクソン系は一緒に仕事をしてから飲みに行くため、飲み会はほぼ「打ち上げ」で相手は既存顧客(トランザクション文化)。日本はビジネス成立前に酒を酌み交わし関係性を深めてから仕事を始めるため「接待」的になる(リレーション文化)。→ 第1章
- **雑談で失う3つ**: 無意味な雑談が奪うもの。①貴重な「時間」②ビジネスの「可能性」③「レピュテーション」(評判)。役職が上になるほど価値ある情報を切実に求めており、刺さらなければ途中で席を立たれる。→ 第1章
- **CtoC / BtoB**: ビジネスの雑談は BtoB(会社対会社)ではなく CtoC(個人対個人)の関係である、という本書の主張。上下関係を崩し、対等な人間関係から企業間取引につなげる視点。→ 第1章/第3章前半
- **リベラルアーツ**: 日本語では「一般教養」だが、元来は人間を束縛するものから解放するための知識、生きるためのチカラを身につける手法。歴史・政治・アートなど、世界の一流が雑談に求めるもの。身につけるには時間がかかるため、本書は代わりに質問力を推す。→ 第1章/第3章後半
- **トランスナショナルな考え方**: 国別のコンセプト(日本=集団主義/ハイコンテクスト、アメリカ=個人主義/ローコンテクストなど)を前提にしつつ、国と国の枠組みを超えて多面的にアプローチする視点。→ 第1章
## グーグルと社内雑談
- **社内雑談力**: 社内の雑談を「親睦」ではなく、生産性を上げてアウトプット(成果)を出すための重要なツールとして戦略的に活用する力。→ 第2章 Part1
- **TGIF(Thanks Google It's Friday)**: グーグルの毎週金曜午後の全社ミーティング。お酒やおつまみを用意し、経営幹部に社員が直接質問できる。「社長の意見は間違っていると思います」といった反対意見にも感情的にならず丁寧なフィードバックを返すため、忌憚のない意見が出るようになる。→ 第2章 Part1
- **create collisions(衝突を作る)**: 偶発的な接触をオフィス設計そのもので発生させるグーグルの考え方。広いスペースや会議室を狭い通路でつなぐ、社員食堂に「ひとりで座れる席」を作らない、など。→ 第2章 Part1
- **コーチと選手の関係**: マネジャーとメンバーの正しい関係モデル。上司と部下という縦の関係ではなく、コーチが選手のパフォーマンスを引き出すように、マネジャーはメンバーのアウトプットを最大化する役割を担う。→ 第2章 Part1
- **Googlegeist**: グーグルの組織状態を可視化するエンゲージメント(働きがい)サーベイ。「My manager treats me as a person(私のマネジャーは、私を人として見ている)」という項目があり、メンバーが非人間的な扱いと判断すればそのマネジャーは会社を去ることになる。→ 第2章 Part1
- **職場の雑談7つの相乗効果**: ①仕事以外の「つながり」ができる ②お互いの「信頼感」が高まる ③「心理的安全性」が高まる ④「働きやすい環境」が生まれる ⑤「モチベーション」が高まる ⑥ミーティングで「発言」しやすくなる ⑦会議の結論に「納得」して働けるようになる。→ 第2章 Part2
- **パワーダイナミクス**: 会社や部署の力関係。目先のタスクに集中して雑談しないでいると社内政治の変化を察知できず、気づいたら蚊帳の外に置かれる。雑談の軽視はリスクヘッジの放棄とイコール。→ 第2章 Part2
- **アンコンシャス・バイアス/親和性バイアス/確証バイアス**: 社内の代表的な3類型。無意識の偏見(「育児中の女性社員に営業は無理」)、自分と似た相手を高く評価する傾向、自分が正しいと思う情報ばかり集める傾向。バイアスは対話でしか排除できない。→ 第2章 Part2
- **ベネヴォレント・セクシズム(慈悲的性差別)**: 「女性は弱く繊細だから男性が保護しなければならない」という善意や親切心の形をとった性差別。悪意が感じられず社会的に許容されやすいため、結果的に女性からチャレンジの機会を奪う。→ 第2章 Part2
## マネジメントの雑談
- **キャリア・カンバセーション**: マネジャーとメンバーが「仕事観」や「期待値」を共有し、キャリアへの意識を育んでいく対話。主なテーマは①現在の興味・関心 ②短期と長期の将来についての希望 ③目標達成のための準備や具体的なアクション。→ 第2章 Part3
- **マイクロマネジメント/マクロマネジメント**: 前者は若手の行動を細かく管理・チェックする過干渉なマネジメント。後者はその反対で、チームの方向性を示した上でメンバーの自主性を尊重しやり方を任せる。マクロマネジメントは若手だけでなく中途採用者・時短勤務社員・再雇用シニアにも効く。→ 第2章 Part3
- **デジタル過干渉**: テレワーク普及に伴う、テクノロジーを使ったマイクロマネジメント。カメラの常時オン強要や30分毎の進捗報告義務など。→ 第2章 Part3
- **プレイング・マネジャー**: 自分もプレイヤーとして動きながら管理職を兼ねる日本型管理職。マネジメントの専門知識がなく、自分の「経験値」だけを頼りに手探りでメンバーを管理しがち。→ 第2章 Part4
- **Manage your manager(あなたのマネジャーをマネジメントしなさい)**: 海外一流企業の考え方。異動してきたばかりの不慣れな管理職や仕事のできない上司には、部下の方から積極的に働きかけて管理職としての仕事をやらせる。→ 第2章 Part4
- **オーバーコミュニケーション/アンダーコミュニケーション**: 報連相を過不足なく、あるいは必要以上に細かく発信すること。グーグルでは当たり前で、アンダーコミュニケーションだと「仕事ができない」「仕事をしていない」と判断される。結果的にマネジャーを安心させて過干渉を回避できる。→ 第2章 Part4
- **ガス抜き**: 居酒屋で愚痴を言い合って鬱憤を晴らす日本型の不満処理。海外は「それ、どうする?」「どんなことができる?」というアクションベースの会話に向かう。→ 第2章 Part4
## ビジネスの雑談と質問技術
- **確認作業**: 雑談の最初のミッション。①相手の状況 ②ビジネス状況 ③新たに必要となる情報、の3つを確認する。海外の一流はこれを済ませてから本題に入る。→ 第3章前半
- **下準備**: 海外の一流が雑談を位置づける言葉。本題前の「イントロ」ではなく、その日のアジェンダを達成するための準備。→ 第3章前半
- **ビジネスの雑談4つの目的**: ①「つながる」相手との距離を縮めて信用を作る ②「調べる」最新の動向や現状の情報を収集する ③「伝える」自社の意向や進捗を報告する ④「共有する」最新の情報を相互に認識する。→ 第3章前半
- **7つの質問**: 相手のビジネスの本質を知るための質問セット。質問①②で価値観・信念、③④で仕事の基準・モチベーション、⑤で自分の成長、⑥⑦で仕事の進め方・協力体制がわかる。ストレートに聞くと怪訝な顔をされるので、表現を工夫してさり気なく聞き出す。→ 第3章前半
- **ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)/ハマる**: 取引開始から終了までに顧客がもたらす利益の総量。単発ではなく、相手に「この人から買い続けよう」と思わせる「ハマる」状態を作ることを目指す。→ 第3章前半
- **パートナーシップ**: 顧客を「お客さん」ではなく「パートナー」と捉える関係。著者のコンサルタント事業では、外部の人の前では「お客さん」と呼ぶが内部では「パートナー」と称している。→ 第3章前半
- **サイクル→トレンド→パターン**: 未知の業界の相手と話す際の3点セット質問。サイクル=業界内で周期的に繰り返す流行、トレンド=その中で最も新しいもの、パターン=業界の代表的なビジネスモデル(例: 製造小売業)。→ 第3章後半
- **スクリーニング(ふるい分け)/時間泥棒**: エグゼクティブは雑談の最初の5分で「敵か味方か」「戦力になるか」「腹を割って話せるか」を選別している。価値のない話をする相手は「時間泥棒」と見なされ即退場。→ 第3章後半
- **普遍的な問い**: 「あなたにとって、人生の意味とは何ですか?」のような、誰にでも当てはまり相手が後から考え込むレベルの深い質問。リベラルアーツを身につけるより短時間で質問力を高める手段。→ 第3章後半
- **素朴な疑問なんですけど**: 著者の口癖である前置きフレーズ。深刻な表情を作らず軽い笑顔で使うことで、聞きにくい核心にも相手が構えずに答えてくれる。→ 第3章後半
- **雑談の場**: 移動中の廊下・トイレ・帰りがけのエレベーター・別れ際といった、本題の前後にある1〜2分の情報収集チャンス。相手の上司がいる前では引き出せない本音が出る。日本人はここをスルーしがち。→ 第3章後半
- **外国人カード**: 著者がチーム内で担う役割。外国人であることを理由に日本人なら遠慮する踏み込んだ質問(「そちらのチームは仲がいいんですか?」)をぶつけ、直後に日本人メンバーがフォローを入れる分業。→ 第3章後半
- **ファシリテーション**: 会議を円滑に進める技法を雑談に応用したもの。①全員に発言機会を作る ②多様な意見を集めて整理する ③重要なポイントを深掘りする ④話題を広げて情報を聞き出す ⑤集めた情報を合意形成の材料にする。→ 第3章後半
- **If you want to be interesting be interested**: デール・カーネギーの名言。「興味深い人になりたければ、興味を持て」。こちらが興味を示さなければ相手にすぐ伝わり、示せば相手も興味を持ってくれる。→ 第3章前半
## NGと例外
- **ファクトベース/価値観ベース**: 経歴・出身校といった事実を単刀直入に聞くのがファクトベースで、相手にネガティブに刺さるリスクがある。「何を大切にしているか」「仕事の醍醐味は」と聞くのが価値観・信念・期待ベースで、こちらはリスクがゼロ。→ 第4章 NG02
- **質問のアングルを変える**: 危険な質問を避けつつ同じ情報に到達する技法。「ご結婚は?」ではなく「休日は何を?」、「誰と飲んだの?」ではなく「何を飲んだの?」。→ 第4章 NG01
- **キーワードを拾う**: 相手が自己開示で出してきた語(「大学時代の友人」「日本酒」など)を起点に質問を重ね、プライバシーに過干渉せず自然に相手を知る方法。→ 第4章 NG01
- **ご法度**: 海外企業・外資系企業における収入の話題の扱い。中途採用が大半で極端な賃金格差があるため、マナー以前に雇用契約や就業規則で禁止されていることが多い。→ 第4章 NG03
- **定例雑談**: 月曜の朝の「週末は何をしてました?」のような恒例行事化した雑談。すでにラポールがあるなら無用の無駄話で、「あえて雑談をしない」という選択肢を持つことが良好な関係の継続につながる。→ 第4章 補足