# 第3章 どうすれば結果が出せるのか? 武器としてのビジネスの雑談 〜天気の話でお茶を濁している場合ではない!〜 (part2 PDFのp35〈章扉・進捗67%〉〜p50〈進捗77%〉。**この章は分冊の途中で終わっている → part3に続く**) ## 中心主張 社外のビジネス相手との雑談は、本題に入る前の「イントロ」ではなく、その日のアジェンダを達成するための**下準備**である。海外の一流は、雑談の数分で相手の状況・意思決定の流れ・立ち位置を確認し、必要なら本題の方向性そのものを変える。日本のビジネスマンはこの確認作業をスルーして、用意したスライドを説明し始めてしまう。 ## 実践指針 - **商談・打ち合わせの冒頭では**、次の3点を雑談で確認する。①**相手の状況の確認** ②**ビジネス状況の確認** ③**新たに必要となる情報の確認**。 - **相手がバタバタしている様子なら**、「何かありましたか?」と聞く。「お疲れですか?」と聞いて本題に入れるかどうかを判断する。「仕事上の問題が発生している」「出掛けに妻とケンカした」など、目に見えないトラブルが起こっている可能性もあるので、**雑談を通して相手のコンディションや心の準備の状況を、あらかじめ確認しておく**。 - **相手の様子に違和感を感じたら**、次のように切り出す。**「貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。本日は詳しい資料やスライドを準備しておりますが、すぐにプレゼンを始めてもよろしいでしょうか? 何か新しい課題があるとか、違う方向性が見えたということであれば、先にお聞かせください」**。 - **予算がなくなったなど状況が変わっている場合は**、その場で**無駄なプレゼンをすることなく、新たな方向性に沿った話し合いを素早く始める**。わずか数分の確認作業で、その後の結果が大きく違ってくる。 - **相手企業に売り込む場面では**、**誰が予算を握っているか/誰が最終的な意思決定者か**を確認する。決定権のない担当者に全力投球しても意味がない。決定権がないなら誰にプレゼンすればいいのかを早い段階で知っておく。 - **意思決定の流れが不透明な場面では**、ストレートに質問する。**「どなたが意思決定者ですか?」「何が意思決定の決め手になるのか?」「意思決定の障害になる要因は何か?」**。グローバル企業や外資系企業であれば失礼には当たらず、当然のこととして答えてくれ、こちらから質問しなくても先に伝えてくれることもある。 - **営業目的の雑談では**、単発のビジネスではなく**長期的に成果を上げられるような関係を築く**。雑談を通じてお互いの信頼関係を深め、相手に「**この人から買い続けよう**」と思わせるような、俗にいう「**ハマる**」状態を作る。 - **雑談で目的を見失わない**ために、**4つの目的**を意識する。①「**つながる**」相手との距離を縮めて信用を作る ②「**調べる**」最新の動向や現状に関する情報を収集する ③「**伝える**」自社の意向や進捗状況などを報告する ④「**共有する**」最新の情報を相互に認識する。 - **アジェンダが終わった後も雑談を交わす**。緊張が少し緩んだ状況であれば、お互いにリラックスして雑談できる。相手がどんなことに興味があり、どんなキーワードに刺さるのか、時間が許す限り探っていくことも可能になる。 - **上下関係を作らない**。日本では発注元・大手企業・顧客が偉そうに振る舞いがちだが、**あくまで「CtoC」(人と人)の視点に立ち、対等な人間関係を作る**。相手企業のトップと親しく付き合おうとするのではなく、**予算を握っているのが課長や部長であれば、その立場の人と信頼関係を結ぶ**ことを考える。 - **対等な関係を作る3つのアプローチ**: ①**お互いの共通の「趣味」を見つける**(「ゴルフがお好きなんですか? 私も大好きです。今度、ご一緒しませんか?」「お酒はお好きですか? 面白いお店がありますので、ぜひ行きましょう」「お子さんはウチと同じ年ですね。子供たちと一緒に何かやりませんか?」)②**お互いに共通する「体験」や「考え方」を共有する**(「私も何度か転勤していますが、単身赴任というのは本当に寂しいですよね?」「仕事で最も辛かったのはどんな時期ですか?」「逆に、一番楽しかったお仕事は何ですか?」)③**相手にとって「必要不可欠」な存在になる**(自分が知らない情報を持ってきてくれる、この人と仕事をすると結果が出る)。 - **雑談で意識を集中する対象は**、「どこが同じで、どこが違うのか?」。**相手に「興味」や「好奇心」を持って接する**姿勢そのものが問われている。小手先のテクニックで「何とかその場を乗り切る」ことはできても、信頼関係を高めることにはつながらない。 - **雑談の目的は、その場を「しのぐ」ことではなく、お互いの関係性を築くこと**だから、もっと根本的な問題に目を向ける。 - **相手を喜ばせようとしない**。好感を持ってもらいたいと考えて、楽しませるような話題ばかりを提供するビジネスマンがいるが、ビジネスの場では効果は期待できない。**露骨なヨイショ話などは、逆効果になることもある**。 - **本質を知るための7つの質問**(著者が主催するビジネスマン/マネジャー向けワークショップで使用。何回かに分けながら、自然な雑談の流れで聞いていけば、相手のビジネスに対する本質に触れることができ、ラポールを作りやすくなる): - 質問①**あなたは仕事を通じて何を得たいですか?** - 質問②**それはなぜ必要ですか?** - 質問③**何をもっていい仕事をしたと言えますか?** - 質問④**なぜ今の仕事を選んだのですか?** - 質問⑤**去年と今年の仕事はどのようにつながっていますか?** - 質問⑥**あなたの一番の強みは何ですか?** - 質問⑦**あなたは今どんなサポートが必要ですか?** - **7つの質問を使う場面では**、ビジネスの相手に対して「あなたは仕事を通じて何を得たいですか?」などとストレートに聞くと怪訝な顔をされることは確実だから、**表現を工夫しながら、さり気なく聞き出す**。(質問①②は相手の「価値観」や「信念」、質問③④は「仕事の基準」や「モチベーション」、質問⑤は「自分の成長」、質問⑥⑦は「仕事の進め方」や「協力体制」を知ることができる) ## 根拠となる事例・考え方 - 日本のビジネスマンは雑談を**本題に入る前のイントロ**と考え、その日のアジェンダとは無関係な話をする。海外の仕事ができるビジネスマンは、雑談を**「下準備」**として活用している。彼らが雑談の最初のミッションと考えているのは**「確認作業」**。初対面であれ、何度も顔を合わせている相手であれ、目の前の相手の立ち位置や役割、その日の体調や心構えなどを雑談を通して確認している。 - **この確認作業はビジネスや商談の基本中の基本だが、日本のビジネスマンは意外にスルーしている**。「お世話になります。今日は暑いですね」と挨拶を交わし、軽い世間話などが終わると、すぐに本題に入ってしまう。相手の状況を観察することなく「それではスライドを用意しましたので、ご説明させていただきます」とプレゼンテーションを始めてしまう。**相手の曖昧な表情の意味や、その場に漂う微妙な空気感を、簡単に見過ごすことになる**。 - 日本のビジネスマンは相手に遠慮しているのか、気を遣っているのか、誠意を伝えることばかりに注力して、**決定までの流れを曖昧にしたまま商談を進めているケースが少なくない**。そのあたりを不透明にしておくのが日本式の商談なのかもしれないが、それとなく探り出すような工夫を続けることが大切。少なくとも「何が意思決定の決め手になるのか?」くらいは雑談で聞き出しておく必要がある。 - **日本の上下関係の弊害**: 発注元は仕事を与える立場として偉そうに振る舞い、受注元の営業マンは相手にペコペコすることが「普通」と考えられている。「お金を払うのだから、しっかりやれ」という上から目線の顧客に対して「くそー、また残業だよ」と愚痴りながら、**プライベートの時間を犠牲にして働く営業マンの姿は、海外ではありえない光景**。こうした上下関係が続く限り、日本の「働き方改革」が実現する日はやって来ないのではないかと思えるほど。上下関係の弊害は、単に働き方の問題だけではなく、**お互いの信頼関係が構築されない状態で仕事をすることになるから、発注元の思惑に振り回されるだけで、仕事のクオリティが向上することは期待できない**。顧客企業にとっても、営業マンにとっても、あまりいい関係ではない。 - **著者のコンサルタント事業**では、外部の人の前では顧客のことを「お客さん」と呼んでいるが、**内部では「パートナー」と称している**。社内のメンバーには、相手の担当者と信頼関係を築いて、しっかりとした「**パートナーシップ**」を構築することを強く求めている。そのためには、雑談を通してお互いの人間性や考え方を強く求めている。 - **海外でも日本でも、継続して結果を出している営業マンは、予算を含むビジネスの意思決定者を見極めて、対等な人間関係を作っている**。 - **海外の一流ビジネスマンは「CtoC」の関係を「BtoB」につなげることをイメージ**しながら、ライフタイムバリューを高めるための雑談をしている。自分のことを知ってもらい、相手のことも理解することで、**長期的で安定的な人間関係を築くことを目指している**。仕事のできるビジネスマンの多くは、担当者と深い信頼関係で結ばれた複数の取引先を持っているから、新規獲得やノルマに悩むことがない。**「昨年のあれを、今年もお願いしますね」と電話1本で営業を済ませているため、時間と気持ちの余裕を持って次のビジネスと向き合っている**。 - **お互いが「敵」ではなく「味方」と思えるようになれば、少しくらいの揉め事でも乗り切れることになり、時には無理なお願いをすることもできる**。お互いに味方だからこそ、「**ビジネスではフェアにやりましょうね**」と語り合えることが「Win-Win」な関係作りにつながる。 - **小手先のテクニック批判**: 日本では、ビジネスマン向けの雑談に関する本が数多く出版されているが、その大半が「どんなネタを話せばいいか?」「お互いが話に詰まったら、どうすればいいか?」という**小手先のテクニックの話に終始している**。 - **男女の恋愛への置き換え**: 男性の中には、女性と会話する時に「何を話したらいいのかわからない」と不安を感じている人が少なくない。その不安は「**何を話題にすればいいのか?**」という小手先のテクニックの問題に原因があり、**まず最初に考える必要があるのは話題ではなく、相手の女性と「どうなりたいのか?」という根本的な動機**。相手と「もっと親しくなりたい」のか、「友達になりたい」のか、「口説き落としたい」のか、その目的をハッキリと自覚すれば、自然と接し方が決まってくる。**基本的には、相手に興味を持っているか、持っていないかという姿勢の問題**。 - **デール・カーネギー**(自己啓発書の元祖として知られる世界的ベストセラー『人を動かす』を書いたアメリカの作家)の名言: **「If you want to be interesting be interested」(興味深い人になりたければ、興味を持て)**。 - **雑談はコーチングと同じ**: 小手先のテクニックに頼ることなく、相手を人として見て、好奇心を持って集中することで、**本質的な質問をすることができる**。こちらが興味を示さなければ、相手に興味のないことがすぐに伝わってしまう。**こちらが興味を示せば、相手も興味を持ってくれる**。 - **少し挑発的なことを質問したら、相手はどのように反応するのか?** 価値観や本当に深い話を投げかけた場合、相手はそれを拾ってくれるのか? 果たして、その深さはどこまであるのか? ——**様々なアングルから相手の本質に迫る試みをすることが、内容のある深い雑談につながっていく**。 - **ラポールを作るための「3原則」**: ①相手が「**何を大切にしているか?**」を知る ②相手が「**何を正しいと思っているか?**」を知る ③相手が「**何を求めているか?**」を知る。 ## キーワード - **確認作業**: 雑談の最初のミッション。①相手の状況 ②ビジネス状況 ③新たに必要となる情報、の3つを確認する。 - **下準備**: 海外の一流が雑談を位置づける言葉。その日のアジェンダを達成するための準備。 - **ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)**: 取引を開始してから終了するまでの間に、顧客がどれだけの利益をもたらしてくれるのかという価値基準。営業マンは単発ではなく長期的に成果を上げられる関係を築くことが求められる。 - **ハマる**: 相手に「この人から買い続けよう」と思わせる状態。 - **CtoC / BtoB**: 対等な人と人の関係(CtoC)を起点に企業間取引(BtoB)へつなげる発想。上下関係を崩すための視点。 - **パートナーシップ**: 顧客を「お客さん」ではなく「パートナー」と捉える関係。 - **ビジネスの雑談4つの目的**: ①つながる ②調べる ③伝える ④共有する。 - **7つの質問**: 相手のビジネスの本質を知るための質問セット(上記実践指針を参照)。 - **ラポールの3原則**: 相手が何を大切にしているか/何を正しいと思っているか/何を求めているか。 - **If you want to be interesting be interested**: デール・カーネギーの名言。「興味深い人になりたければ、興味を持て」。 --- **(part3に続く)** — 分冊part2はp50(77%)の「7つの質問」の分類解説(質問①②=価値観・信念、③④=仕事の基準・モチベーション、⑤=自分の成長、⑥⑦=仕事の進め方・協力体制)の途中で終わっている。第3章の残りはpart3を参照。