# Part4 メンバー(部下)に必要な雑談とは? (第2章内のPart4。part2 PDFのp27〜p34、進捗58%〜66%) ## 中心主張 日本企業の管理職の大半は「プレイング・マネジャー」で、マネジメントの専門知識を持ち合わせず、自分の経験値だけを頼りに手探りでメンバーを管理している。だから部下の側にも「マネジャーをマネジメントする」という視点が必要になる。上司が置かれている状況と考え方を雑談で正確に把握し、オーバーコミュニケーションで安心させ、上司が何を求めているか仮説を立てて検証していくことが、結果として自分を守る。 ## 実践指針 - **上司と雑談する場面では**、次を意図的に聞き出す。◆**上司の立ち位置の確認**: ①どんな考えを持って、仕事と向き合っているのか? ②何を求めて仕事をしているのか?(出世、給料、自分の時間)③自分自身の仕事内容をどのように評価しているのか? ④自分の上司と、どんな関係にあるのか? ⑤自分の上司から何を求められているのか? - ◆**部下に対する評価の基準**: ①どんな基準で、部下を評価しているのか? ②それぞれの部下を、どう評価しているのか? ③その評価を、自分の上司にどう説明するのか? ④部下がどんな成果を上げることを期待しているのか? ⑤どういう状態を理想としているのか? ⑥部下にどんな働き方を求めているのか? - ◆**リスク管理に関する視点**: ①どんなことに困っているのか? ②何をリスクと考えているのか? ③長期的にどうしていきたいのか? - **一度にすべてを聞き出そうとしない**。**取引先への移動中や居酒屋、喫煙室、ちょっとした空き時間など、上司と雑談をするチャンスを見つけては、ひとつずつ地道に聞いていく**。不審に思われるどころか、仕事熱心と受け取ってくれる。目的は上司にゴマをすることではなく、**お互いにメリットがある関係や環境を作っておく**こと(そうしないと共倒れの危険性がある)。 - **上司の指示に不満がある場面では**、従順であることだけを大事にしない。**場合によっては反論をすることも、これからの時代は大切**。部下が上司に仕事を教えたりサポートするような習慣がない日本企業では、上司の立場を尊重するための気遣いが**外国人の目には「嫌がらせ」ではなく不思議なものに映る**。 - **仕事のできない上司を相手にする場面では**、部下の方から積極的に働きかけて、管理職としての仕事をやらせる。**「あなたのマネジャーをマネジメントしなさい(Manage your manager)」**。 - **困ったことがあったら**、遠慮なく聞く。**このひと言があるだけで、お互いにストレスなく仕事をすることができる**。 - **報連相をする場面では**、過不足なく、あるいは**必要以上に細かく情報を発信する**。メンバーはマネジャーに対して「報告」「連絡」「相談」をする義務があるが、これをきちんとしていれば**意外と過干渉が回避できて、自分のペースで仕事ができる**。 - **上司と初めて仕事をする場面では**、いきなり本質を聞く。著者はモルガン・スタンレー入社時、直属の上司になる人に**「今年の戦略を教えてください」**と質問した。 - **エグゼクティブに限らずマネジャーと話す場面では**、**「結論ファースト」の会話**を心がける。上司が置かれている状況を理解しながら、「何を求めているのか?」「どんなことに困っているのか?」という**仮説を立てて、それを検証するような雑談を日ごろから積み重ねる**。 - **リサーチ目的で雑談する場面では**、会議室で30分〜1時間の枠を設けて聞かない。「これは企業調査のためのインタビューです」と伝えて話を聞くと、返ってくる答えは無難なところに着地する(「社員のことを考えてくれる、素晴らしい会社だと思っています」)。**場所を変えて、居酒屋で生ビールでも飲みながら雑談をすると、答えが180度くらい変わる**。 - **本音を引き出す前置きとして**、外部の話から入る。「この間、ブラック企業の話をネットの記事で読んだんですけど、最近はこういう会社が多いようですね」→「あなたの会社はどうですか?」と聞く。(同じ人の口から「いやぁ、まさにブラックです。真っ黒ですよ」が出てくる) - **リサーチや情報収集、意見交換をする場面では**、**時間や場所を変えて、何度か同じ質問を繰り返してみる**ことで得られる知見が重要。 - **愚痴を言う/聞く場面では**、「ガス抜き」で終わらせない。「それ、どうする?」と可能性や解決策を探す会話に持っていく。愚痴を言う場合でも、それを相手にぶちまけて気晴らしをするのではなく、**相手に相談することで「アドバイス」を求めるような会話にする**。 - **愚痴をこぼすだけの人がいたら**、「**何もしないで、愚痴を言うことに、どんな意味があるの?**」と詰められると思っておく(海外ではそうなる)。 ## 根拠となる事例・考え方 - 日本企業の大きな特色のひとつは、**チームのマネジャーなどの管理職の多くが「プレイング・マネジャー」**であること。グーグルのマネジャーは、部下と一緒になって成果を出すだけではなく、アジェンダの進め方からメンバーのコンディションまで、業務全般に関して専門的なアドバイスをするなど、文字通り「マネジメント業務」に徹している。 - 日本のマネジャーの多くはマネジメントに関する専門的知識を持ち合わせていないため、**自分の「経験値」だけを頼りにして、手探り状態でメンバーのマネジメントをしている**。これが原因で部下の不平や不満につながることも珍しくないから、**部下としては自分を守るためにも上司が置かれている状況や考え方などを正確に把握しておく必要がある**。 - **人事異動が多い**ことも日本企業の大きな特徴。本人も納得しての異動もあるが、不本意なケースが多いため、それがマネジメントの専門性を高められない原因にもなっている。**多くの日本企業にはチームがボトムアップで上司に仕事を教えたり、サポートをするような習慣がない**。 - 営業部から経理部に異動してきたばかりの課長が、すぐに満足な仕事ができるはずはないが、ベテランの経理マンが「課長、これはどうすればいいですか?」と指示を仰いだりしている。 - **オーバーコミュニケーション**: グーグルでは、メンバーのオーバーコミュニケーションはごく当たり前のことと受け取られていた。個人主義的なイメージを持つ人が多いと思うが、その実態は**集団主義的で、チームが総力戦でパフォーマンスを上げていくことが求められる**。そのためには綿密な「報・連・相」が必要であり、**アンダーコミュニケーションの場合は「仕事ができない」「仕事をしていない」と判断されてしまう**。マネジャーを安心させて自分がのびのびと仕事をするためには、「報・連・相」はオーバーコミュニケーションくらいでちょうどいい。 - **著者のモルガン・スタンレー入社時のエピソード**: 金融業界が成長し組織も急激に大きくなっていた時期、直属の上司になる人(アジアパシフィックのオペレーションのトップ)に、**最初に「今年の戦略を教えてください」**と聞いた。「これから一緒に仕事をするのだから、どのような作戦で結果を出していこうと考えているのか、一番に聞いておく必要がある」と思ったため。相手は一瞬にして驚いた表情になり、「何かマズイことを聞いたのかな?」とヒヤッとしたが、返ってきたのは**「正直、驚きました。僕の部下は今のアジェンダの話ばかりで、全然そういう会話をしてくれないんですよ。あなたは、入社した日に、すぐそこに踏み込みました。素晴らしいです」**。急に嬉しそうな顔になって「まとまっていない部分もあるんですけど、僕が考えているのは、こういうことです」と語り始め、**自分が達成したい目標や、そのための戦術などを詳しく教えてくれた**。その後すぐに直属の部下のマネジメントチームの打ち合わせに誘われ、「今度、一緒に仕事をすることになったピョートルさんです。ぜひ、今後のロールモデル(お手本)にしてください。あなたたちと違って、僕に戦略の話をズバリと聞いてきました。今年の戦略を教えてください、と」と紹介され、直属のチームに入ることになった。**このひとつの質問がトップのハートに突き刺さり、幸運なスタートを切ることができた**。質問しなければ、ラポールを作ることができず、まったく違った展開になったはず。 - **ヨーグルトのマーケット・リサーチ**: 著者はフランスのパリに本社を置く大手食品メーカーのマーケティング部長に頼まれ、ヨーグルトの市場リサーチに雑談を活用した。彼女はポーランド人で、日本のヨーグルト市場の動向や日本人の消費パターンをフランスの上司に説明する必要があったが、日本の事情を何も知らないためサポートすることになった。日本ではヨーグルトを食べるのは朝食時が多く、フルーツやハチミツを入れてデザートとして楽しんでいる人が多いが、**ポーランドでは肉料理やスープに入れて酸味を出したり、アンチョビ(カタクチイワシの塩漬け)にかけて食べるなど、デザートとしてだけではなく、調味料的な食材としても親しまれている**。著者も彼女も、日本人がどのようにヨーグルトを食べているのか知らなかったので、ビジネスで出会った人や友人、知人に片っ端から聞いて回った。「ヨーグルトを食べてますか?」「どんなヨーグルトが好きですか?」「ヨーグルトに何を入れてますか?」とひたすら聞き回った結果、**かなりビビッドなリサーチをすることができた**。ヨーグルトは子供も食べられる食品なので、老若男女を問わず誰にでも聞くことができたのが幸いだった。 - **不平・不満の扱い方の日本と海外の違い**: 仕事が終わってチームのメンバー同士が居酒屋などに集まると、会社や上司、顧客に対する不平や不満、愚痴が飛び出すのはどこの国でも同じ。日本のビジネスマンは、管理職であれば部下、部下であれば管理職への不満が雑談のメインテーマとなる。**どちらにも共通するのは、自分の扱いに関する会社への不平や、給料の安さを嘆くこと**。「会社はわかってない」「あの上司は無能すぎる」「俺の部下はバカだ」——愚痴を言い合っても何も変わらないことは参加者全員がわかっているが、わかっているからこそ、**いつも同じ話題で盛り上がる。共通の「敵」を揶揄することで日ごろの鬱憤を晴らし、仕事で抱え込んだストレスを発散させている**。 - **ポーランドのホワイトカラー**: 合理的じゃない会話を嫌うから、問題を察知したら**すぐに解決策を考え始める**。「嫌だったら、直接、相手に言うべきだよ」「言わないから、相手に伝わらないんだ」。著者が生まれたポーランドの場合は、お互いがネガティブな情報を持ち合って傷を舐め合うような飲み会はまったく想像ができない。 - **グーグルでも同じ**: 「プロジェクトがうまくいかない」「コミュニケーションが足りていない」となった場合は、メンバーで集まってお酒を飲みながら話し合うことがある。合理的に解決策を探ることはポーランド人と同じだが、**可能性とか、選択肢を話し合って、「じゃあ、どうする?」「どんなことができる?」というアクションベースの雑談が交わされる**。上司が問題であれば「それ、どうする?」という会話になって、極端な場合は「**それなら、明日、みんなで辞めよう!**」という話に発展する。**「変わらないならば、自分で変えるしかない……」という発想が原点にある**。 - **日本のビジネスマンが愚痴をこぼして「ガス抜き」をしているのに対して、海外のビジネスマンは雑談を通して可能性や解決策を探している**。その違いを知っておくだけでも、これからの働き方の参考になり、良し悪しを判断する材料になる。 ## キーワード - **プレイング・マネジャー**: 自分もプレイヤーとして動きながら管理職も兼ねる日本型管理職。マネジメントの専門知識がなく経験値頼みになりやすい。 - **Manage your manager(あなたのマネジャーをマネジメントしなさい)**: 海外一流企業の考え方。直訳すれば、異動してきたばかりの不慣れな管理職や仕事のできない上司を相手にする時は、**部下の方から積極的に働きかけて、管理職としての仕事をやらせる**ということ。 - **オーバーコミュニケーション**: 過不足なく、あるいは必要以上に細かく情報を発信すること。マネジャーの不安を解消し、結果的に過干渉(マイクロマネジメント)を回避する。反対語は**アンダーコミュニケーション**。 - **結論ファースト**: エグゼクティブが好む会話形式。時間がなくせっかちだから。 - **ラポール**: 相手との信頼関係。最初の質問ひとつで作れるか否かが決まる。 - **ガス抜き**: 日本型の愚痴。海外は解決策・アクションベースの会話に向かう。