# Part3 マネジャー(上司)に求められる雑談とは? (第2章内のPart3。part2 PDFのp14〜p26、進捗49%〜57%) ## 中心主張 上司の仕事はアジェンダの進捗状況を確認することではない。部下が今どんな状況にあり、何に困っているのかをリサーチし、それを成果に結びつけていくことが大きな役目である。そのために、部下の置かれている状況を日ごろの雑談を通じて確認し、明確なメッセージを発信することが求められる。マネジャーとメンバーの雑談は、手軽で有効なマネジメント・ツールと考えるべきである。 ## 実践指針 - **1on1や打ち合わせの場面では**、アジェンダばかりに目を向けず**部下の「思い」を大切にする**。「最近、いろんな案件が重なって忙しいけど、きちんと優先順位は取れている?」と聞く。 - **部下のモチベーションを上げたい場面では**、細かい情報を雑談で入手して使う。「このプロジェクトで、具体的に何が楽しい?」「自分のアイデアをいろいろ反映してもらえるので、レポートを作成して発表できるのが楽しみになっています」→「それはいいね。今度の打ち合わせの時には、さらにいいレポートを作って発表してもらいたいな。次回も楽しみにしてるよ」と返す。 - **サポートができない場面でも**、話に耳を傾けるだけでいい。**適切なサポートができなければ、部下の話に耳を傾けるだけでもいい**。 - **子供がいる部下には**、「最近、タケシくんは元気ですか?」と名前で聞いてみる。子供の行動や状況が仕事のパフォーマンスに影響を与えるケースは少なくない。 - **独身の部下には**、ちょっとした変化に目を向け「最近、少し元気がないみたいだけど、何かあった?」と聞く。**些細な質問でも「ちゃんと見てるよ感」は伝わる**。 - **プライベートな話が出たら**、踏み込みすぎないよう注意しながら話を聞く。「昨夜、母親とケンカした」→「お母さんは、どんな方なの?」→「言ってることはわかるんですけど、余計なお世話が多いんです。それが面倒くさいんですよね」→「**お母さんは、君のこと大好きなんだね**」。ひと言添えれば「確かにそうかもな。もうちょっと違う話し方をこちらがすれば、今の状況は変わるかも……」と考えるきっかけになる。 - **問題が起きてから動くのをやめる**。危機的状況になって初めて「どうした?」「何があった?」と重い腰を上げる人がほとんど。 - **1on1を設定できない/時間がない場面では**、あえて時間を設けず、**一緒にランチに行く、移動中の車内、ちょっとした空き時間**を利用して雑談する。フォーマルな1on1だとメンバーは模範解答を準備してその場を乗り切ることを考える。日常的な雑談ならそこまで難しく構える必要はなくなる。 - **本音を引き出したい場面では**、一度で完結させようとせず、**時間・場所・タイミングを変えて何度も繰り返し聞く**。様々なアングルから聞くことで、ようやく本音らしきものにたどり着ける。 - **キャリアの話をする場面では**、フォーマルに1回だけ聞かない。「さあ、今日はあなたの将来の話をしましょう」では相手が身構え、その場しのぎの答えを探し出す。**雑談の折に軽くテーマを振っておき、次の機会に改めて聞く**ようにすれば、相手が考える時間を作れ、本人が自覚していないことに気づくチャンスも生まれる。 - **雑談で踏み込む場面では**、「上司が関心を持って自分に目を向けてくれている」と気づかせる一方、**露骨だと逆に不信感につながる危険性**があるので、意味合いと目的を明確に持ちながら適切なタイミング・言葉を選ぶ。 - **少し乱暴な表現をするなら**、部下のコンディションを把握して生産性を上げるには**多少のリスクは覚悟する**。天気の話をするのは「今日は暑いですね」と言われて怒り出す人はいないから=リスクが低いから。**本音を引き出すにはリスク回避ばかりを計算していては一歩も前に進めない**。 - **踏み込んだ質問をする場面では**、「**興味本位や面白半分で質問しているのではない**」と態度やフォローの言葉でハッキリ示す。日常的に雑談を心がけて不信感を持たれないよう相手を慣れさせておけば、少し踏み込んだ質問も気兼ねなくできるようになる。 - **マネジャー自身が困っている場面では**、弱みを隠さない。「**悪いけど、助けてほしい。今度、メシをごちそうするから**」と素直に頼む。ミスをしたら「**ごめん、失敗した**」と正直に伝える。隠蔽したり責任をなすりつける行為は**メンバーの不信感を増幅させるだけ**。 - **帰宅する場面では**、「これを明日の朝までにやっておいてくれ」と言い残して自分だけさっさと帰るような行為は慎む。 - **若手マネジャーが下の世代を扱う場面では**、SNSやプログラミングの巧みさを**「会社のアセット(財産)」と考えて活用する**。経営幹部が腰を低くして学ぶ姿勢を示せば、テクノロジーを媒介にして経営幹部と若手世代のつながりができ、デジタル化も進めやすくなる。 - **マイクロマネジメントを疑う場面では**、次の5つを冷静に自己チェックする。①若手社員への口調や態度が横柄になっていないか? ②若手社員の考えやアイデアを尊重しているか? ③些細な問題点ばかりを指摘していないか? ④小さなミスを徹底追及していないか? ⑤いい仕事をしたら、それを認めて褒めているか? - **「まだ早い」と言いたくなる場面では**、真逆の行動を取る。**「それをやるのはまだ早い」→「この作業は君に任せるよ」/「まだ意見は言うな」→「どんどん自分の意見を言っていこう」**。指示にきちんと説明を添えれば、若手メンバーの不安が軽減され、信頼されている自覚から懸命に取り組み、経験値が高まって成長スピードが早くなる。 ## 根拠となる事例・考え方 - 日本企業の上司の多くは、部下の「思い」ではなくアジェンダの進捗ばかりに目を向けがち。**海外企業の仕事ができる上司は部下の「思い」を大切にしている**。 - 日本の会社の1on1は、あらかじめ時間と場所を設定するため、マネジャーとメンバーが緊張した状態で手探りの会話をしているケースがほとんど。**このままの状態で続けても、いつまで経っても成果は上がらない**。 - **著者が接してきた優秀なマネジャーの共通特徴は「腰が低い」こと**。経営トップにも共通し、海外でも日本でも、優秀なリーダーほど尊大な態度を取ることはなく、常に謙虚な姿勢で相手と向き合っている。相手を見下すような不遜な態度のリーダーは、一時的には成功しても長続きしない。**リーダーの資質とは、発想力や行動力ではなく、常に謙虚な姿勢を貫ける人間的な強さ**。 - マネジャーが自分の弱みを積極的に開示できるチームは、自然と風通しが良くなり、何でも話し合える環境が生まれる。そんなことで上司の「威厳」が保てることは**100%ない**。**マネジャーの心がけひとつで、チームはどのようにでも変わる**。 - **若手マネジャーの悩み**: 入社1〜5年目の社員を、入社10年目前後(30代前半、主任・係長クラス)の社員がマネジメントするケースが増えている。20代前半の世代はメンバー同士の雑談をSNSで済ませ、会社の人とプライベートの時間を過ごすことを好まず、居酒屋に誘われても可能な限り拒否する。会社に執着せず、嫌なことがあればすぐ辞めてしまう。**「仕事に関係のない話は勘弁してください」と拒否されると、取り付く島もない状態**。 - **デジタル格差の是正と紐づける作戦**: 日本企業の社長や役員などの経営幹部のほとんどがビジネスのデジタル化に頭を悩ませ、テクノロジーの知識に疎いため、デジタル化を推進できない。若い世代がテクノロジーを教える側になれば、それは彼らにとっての「仕事」のひとつになり、自然と雑談の機会が生まれる。**若い世代は経営幹部の知遇を得るチャンスに恵まれる**。 - **テレワークによるデジタル過干渉**: 在宅勤務が増え「真面目に働いているのか?」と不安になるマネジャーが多く、勤務時間中はウェブ会議システムのカメラを常にオンにしておくことを強要したり、メールやチャットで30分毎に進捗報告を義務付けるなど、「デジタル過干渉」が蔓延している。 - **オーバーコミュニケーションの効用**: マネジャーの「マイクロマネジメント」は、上司や管理職の立場から見れば常にアジェンダの進捗が気になり慢性的な不安を抱えているもの。メンバーが**オーバーコミュニケーション**を意識すれば、マネジャーは安心して部下の仕事を見守れる。 ## キーワード - **キャリア・カンバセーション**: マネジャーとメンバーが「仕事観」や「期待値」などを共有し、お互いの理解を深め合いながらキャリアへの意識を育んでいくこと。海外企業・外資系企業では一般的で、日本でも大手企業だけでなく中小企業でも実施する会社が増えている。主なテーマは①現在、何に興味や関心を持っているか? ②短期と長期の将来についての希望 ③目標を達成するための準備や具体的なキャリアの選択、目標を達成するための準備や具体的なアクションの構想。 - **マイクロマネジメント**: マネジャーや先輩が若手社員の行動を細かく管理・チェックし、過干渉してしまうマネジメント。若手社員がマネジャーや先輩との接触をできるだけ避けたいと考える理由のひとつ。 - **マクロマネジメント**: マイクロマネジメントの反対語。**チームの方向性を示した上で、メンバーの自主性を尊重し、やり方を任せる**マネジメント。心理的安全性が高まり、若手メンバーのモチベーションも高まる。**20代前半の若手メンバーだけに有効なわけではなく**、ダイバーシティ&インクルージョンの流れの中で多様なキャリアを積んで入社する中途採用者、介護や子育てをしながら働く時短勤務社員、再雇用のシニア社員など、様々な人たちにも効果のあるマネジメント法。 - **デジタル過干渉**: テレワーク普及に伴い、テクノロジーを使って行われるマイクロマネジメント。 - **アセット(財産)**: 若手世代のプログラミング・SNSスキルを会社の資産と捉える発想。