# はじめに 日本人は「雑談」を世間話や無駄話と考えている **書誌**: ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』クロスメディア・パブリッシング(CROSSMEDIA PUBLISHING)/サブタイトル「年収が上がる会話の中身」/「はじめに」末尾の日付は2023年3月。著者はポーランド生まれ、ドイツ・オランダ・アメリカを経て2000年に来日。ベルリッツで異文化間コミュニケーション、モルガン・スタンレーで組織開発・人材育成を担当した後グーグルへ入社し人材育成統括部長。現在は起業家・経営コンサルタント・社外取締役。 **中心主張**: 日本人は雑談を「とりとめのない会話」「本題前のイントロダクション」と捉え、天気の話などの常套句で場をつなごうとする。しかし世界の一流にとって雑談は明確な意図を持った「dialogue(対話)」であり、本題の成果を出すための武器である。雑談が苦手な人の多くは会話能力が低いのではなく「目的のない会話」が不得意なだけで、目的さえ定まれば強みを発揮できる。 **実践指針** - 口を開く前に「何のための雑談なのか?」「目の前の相手にどうなってほしいのか?」を決める。決まっていない雑談は始めない - 雑談に入る場面では、次の5つの意図のどれを狙うかを1つ選んでから話す ①状況を「確認する」②情報を「伝える」③情報を「得る」④信用を「作る」⑤意思を「決める」 - 「今日は暑いですね」「今日は本当に寒いですね」で場をつなぎたくなったら、それは意図を決めていないサインだと考える - チームで話し始めるときは「Let's chat!」の感覚で、アジェンダが成立していない段階からプランや課題をシェアし、オープンで「ざっくばらん」な情報交換をすることを目的にする - 1on1では、アジェンダの進捗確認だけの「面談」で終わらせず、心理的安全性を保ちながら仕事のパフォーマンスを上げる話をする - 1on1でいきなりプライベートに踏み込まない。上司は評価する立場にあるため、部下は「下手なことを話したらマイナス評価になる」と身構えて無口になる - 相手の人生設計に関わる質問(「結婚する予定はあるの?」など)は、軽い雑談のつもりでもハラスメントとして受け取られる。「これは女性差別ではないか?」と感じさせた時点で失敗 **根拠となる事例・考え方** - 著者は23年にわたり数多くの日本人ビジネスマンと接し、多くが「今日は暑いですね」から会話を始めることに奇妙さを感じてきた。外国人相手だと「日本の料理では、何が好きですか?」「日本の女性は好きですか?」といった無神経な質問が初対面で加わる - グーグルでは「Let's chat!」が頻繁に飛び交う。直訳すれば「雑談しましょう!」だが、ニュアンスは日本語の雑談と大きく異なる。全員がフレックスタイムで自宅やカフェでも働くため、コミュニケーション機会を意識的に増やしておかないと仕事に支障が出る - 1on1は10年ほど前から外資系企業や一部のIT企業で導入され、コロナ禍のテレワークによるメンバーの孤立化で実施が加速した。だが企業が期待する「信頼関係を築き心理的安全性を保ちながら生産性を向上させる」役割を果たせず、単なる面談で終わっているケースが多い - 日本には「気配り」「おもてなし」の文化があり世間の目を気にするわりに、部下とのコミュニケーションはどこか無神経、という矛盾を著者は指摘する - 大手企業に勤める知人女性は1on1で上司から「結婚する予定はあるの?」と聞かれ、「大事なプロジェクトは任せられないということか、昇進はさせられないということか」と不快に感じ、コンプライアンスのヘルプラインに連絡するケースも少なくない **キーワード** - **dialogue(対話)**: 単なる情報のやりとりではなく、話す側と聞く側がお互いに理解を深めながら、行動や意識を変化させるような創造的コミュニケーション。世界の一流が交わしているのはこれであり、日本的な雑談ではない - **雑談の5つの意図**: ①状況を確認する ②情報を伝える ③情報を得る ④信用を作る ⑤意思を決める。本書全体を貫く雑談設計の骨格 - **雑談の上手い人**: 「おしゃべりが上手で面白い話をする人」ではなく、明確な意図を持ち、そこに向かって深みのある会話ができる人。世界基準では「雑談の上手い人」=コミュニケーションスキルの高い人 - **武器としての雑談**: 目的が定まれば苦手な雑談を武器に変えられるという本書の基本スタンス。目的のない「ダラダラと長いだけの会話」を毛嫌いしている人ほど、実は伸びしろがある