# 三行で撃つ チートシート
文章を書いているとき、その場で引くための実用表。「場面 → 行動 → 根拠(発)」。
## 書き出し
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 冒頭の一行を書く | 最初の一文、長くても三行以内で読者を撃つ。外したら獲物は逃げる | 第1発 |
| のけぞらせる一行を思いついた | 全体を読み終えたとき意味が分かるよう仕込む。伏線は必ず回収する | 第1発 |
| 一文目に体言止めを使いたい | 原則やめる。よほどの確信と狙いがなければ禁じ手 | 第1発 |
| 冒頭に数詞を並べたい | その数字が記事を動かすデータかを問う。多くはサービス不足に終わる | 第1発 |
| 「年末の東京・表参道。」と時日・場所で書き出したい | やめる。業界の手癖=「としたもんだ表現」の典型 | 第4発 |
| 文豪の書き出しを真似したい | やめる。小説の書き出しがとろくていいのは、読者が買うと決めているから | 第1発 |
| 読者像を思い浮かべる | 「読書エリート」を想定しない。落ち着きがなく、考えたくもない人が相手 | 第1発 |
| 出だしの作り方を学びたい | 映画の出だしを繰り返し観て研究する(小津安二郎、コーエン兄弟) | 第3発 |
## 構成・企画
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 型を破りたい | 先に型を覚える。型を知らずに崩すと「型破り」でなく「形無し」 | 第6発 |
| 承(5W1H)まで書いて終わりそう | 止まる。必ず転まで書く。承で終わる記事に値段はつかない | 第6発 |
| 転が思いつかない | 五パターンで考える。①古今 ②東西 ③逆張り ④順張り ⑤脱臼 | 第6発 |
| 時間軸で転がす(古今) | できうる限り過去にさかのぼる。全集の事項索引を使う | 第6発 |
| 空間軸で転がす(東西) | 日本以外はどうかを調べ、「絶対はない」と示すだけでいい | 第6発 |
| 世論の逆を書く(逆張り) | 逆を言うだけでは浅い。逆方向に問題を設定し直し、大きな構造まで転がす | 第6発 |
| 世論と同じことを書く(順張り) | ソクラテスのアイロニーで、本音に同意しつつ度を越して進める | 第6発 |
| 話を脱線させる(脱臼) | 膝カックンの要領。脱線と思わせないためにユーモアを必ず添える | 第6発 |
| 「言うまでもなく」と書きそう | 書かない。反論の余地のない命題は真でも弱く、あくびされる | 第6発 |
| 結論が書けない | 結をひねり出さず、手前の「転」を疑う。転が鐘、結はその音 | 第6発 |
| 何を書くべきか決まらない | 問いを変える。「わたしに、なにが、書けるのか」 | 第14発 |
| 情報だけの記事になっている | わたしにしか書けないもの=〈感情〉を書く。具体的には喜怒哀楽 | 第14発 |
| 「楽」を狙う | 自分が喜ぶのではなく他者を喜ばせる。(笑)(w)(草)は逆で、他者を攻撃している | 第14発 |
| ネタを探す | 読者がどこにいるかを先に探す。当たるのは鴨のいる場所にいるから | 第14発 |
| 読者との距離を測る | 半歩先を書く。一歩先は読者を置き去りにする | 第14発 |
| 書くことを決める | 先に「なにを書かないか」を決める。そこにスペース(空間)が生まれる | 第14発 |
| ネタを溜める | 新聞書評(最低五紙)を読み、線を引き、クリアファイルに分類して熟成させる | 第14発 |
| インプットを保存するか迷う | アウトプットをイメージできないインプットは保存しない。有害ですらある | 第14発 |
| 企画ができたか判定する | 自分が驚いたかで判定する。自分が驚かないものに読者は驚かない | 第14発(読書欄②③) |
## 文体・リズム
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一文が長くなった | 二つに分けられる文は全部、二つに分ける。初心者はまず全部分けてみる | 第2発/第16発 |
| 修飾語を置く | 形容語と被形容語を近づける。「違法な野生動物の売買」は誤読を生む | 第2発 |
| 一文に主語と述語が複数ある | 書き直す。一文に主語と述語はひとつずつ | 第2発 |
| 難しい言葉を使いたい | やめる。短い平易な日本語でたたみかける(漱石の日本語) | 第2発 |
| 推敲でスピードを出したい | まずダブり(同じ語・同じ情報の繰り返し)を排除する。それだけで走り出す | 第16発 |
| 「〜という気がする」で締めそう | 断定に書き換える。曖昧な述部はノリを悪くする | 第16発 |
| 短文が続いて単調 | 意図的に長文を入れて変拍子を作る。緩・急・急・緩……の配球 | 第16発 |
| 主語を書こうとしている | 省略できないか検討する。省くとスピードが出て、かえって分かりやすい | 第16発 |
| 過去の出来事を語っている | 現在形(歴史的現在)を混ぜる。「た・た・る・た」で臨場感が出る | 第16発 |
| リズムを学びたい | 落語・浪曲・講談・朗読CDを図書館で借りまくり、〈構造〉をまねる | 第17発 |
| 句読点を置く | 音読して間を確かめる。位置をあだやおろそかにしない | 第17発 |
| 改行しようとしている | 論理が変わるときにしか改行しない。接続詞を入れたいときは段落を変える | 第17発 |
| 七五調になってきた | 狙って七五で書かない。重要な場面ほど明確な七五調は慎重に避ける | 第17発 |
| ゴシック・文字サイズで強調したい | 多用しない。平静さのうちにリズムを出す工夫がおろそかになる | 第17発 |
| 一人称に迷う | 書き始める前に決める。煮詰まったら一人称を変えて書き直す | 第10発/第13発 |
| 文章が似たものばかりになる | 主語・主題・主義・主体の四つの「主」を変える | 第13発 |
## 語彙・描写
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 「抜けるような青空」と書きそう | やめる。常套句はものの見方まで常套的にする | 第4発 |
| 「美しい」と書きそう | 書かない。今日のこの海がどう美しいのかを自分だけの言葉で描く | 第4発 |
| 「言葉にできない美しさ」と書きそう | 自分を疑う。言葉にできないのではなく、考えていない | 第4発 |
| 「行われた」「開催された」と書きそう | 「〜があった」「〜が開かれた」で足りないかを問う。多くは足りる | 第4発 |
| オノマトペを使いたい | 初心者・伸び盛りの時期はいっとき全部やめる。書き手の自意識が迫ってくる | 第5発 |
| 流行語を使いたい | はやり始めの一瞬か、哀愁が漂うころにギャグとして使うかの二択 | 第5発 |
| 「など」「いろんな」「さまざま」を書きそう | 撲滅する。エクスキューズ語であり、仕事の放棄 | 第3発 |
| 固有名詞・数詞を入れたい | まず削る。入れるなら「ストーリーを動かすか」「なければ理解できないか」で絞る | 第3発 |
| 削りすぎて痩せた気がする | 〈必要〉と〈十分〉を分ける。詳しい読者にだけ届くシグナルを埋め込む | 第3発 |
| 形容詞を使いたい | 一つの文にひとつだけ。極端には全部やめてもいい | 第18発 |
| 「スリリングな映画」と書きそう | 事実を書く。伏線、視線、気配、音楽、カット割りを積み重ねる | 第18発 |
| 比喩が出てこない | 〈このわたし〉の体の内側から湧いてくるまで待つ。出ないなら「ただの夜」でいい | 第18発 |
| 語彙を増やしたい | 辞書を引く儀式を持つ。意味確認ではなく発想を変えるエフェクターとして使う | 第12発 |
| 「やばい」で止まった | 類語をたどる。やばい→大変→厄介→億劫、と焦点を移し、語源まで遡る | 第12発 |
| もっと語彙を増やしたい | 逆に制限する。便利な言葉(「なになに的」「超」「○○性」)を一年禁じる | 第12発 |
| オリジナリティが欲しい | 好きな作家の全集を読み、憑依される。自分を〈なくす〉ことで自分が〈できる〉 | 第12発 |
## 感情・伝わり方
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 感情を書きたい | 説明せず、感情が生まれた〈場面〉を切り取る。論ではなくエピソードに語らせる | 第7発 |
| 取材メモを開いた | 「場面はないの?」と自問する。場面がないなら取材が足りない | 第7発 |
| 「肩をふるわせた」と書きそう | 逃げない。ほんとうに怒っている人は肩をふるわせない。固有の動作を探す | 第7発 |
| 「(笑)」を入れたい | 使わない。読者に笑いどころを合図するのは怠慢かつ傲慢 | 第7発 |
| 描写を美しく飾りたい | 飾らない。唯一の原則は〈正確を期する事〉。悪魔に見えたら悪魔と書く(太宰治) | 第7発 |
| 視覚描写ばかりになっている | 聴覚・嗅覚・触覚・味覚を総動員する | 第7発 |
| 「感動した」と書きそう | 〈なに〉に感動したのかを特定する。どの場面か、どのセリフか、照明か演技か | 第15発 |
| 語りを組み立てる | ①つかみ ②状況説明 ③謎 ④予想を裏切る展開 ⑤オチ、どこかで笑わせる | 第15発 |
| 助詞をどれにするか迷う | 「てにをは」を徹底的に選ぶ。古池「や」か「の」かで風景が変わる(陳述の力) | 第15発 |
| 義憤にかられて書いている | 「だれに読ませたいのか」を先に問う。嘲り・説教・一刀両断は想定読者に耳をふさがせる | 第22発 |
| 相手を批判したい | 剣ではなく笑い(ユーモア)を武器にする。糾弾調をやめ、大まじめに問う | 第22発 |
| 依頼メールを書く | 三手詰め。①あなたを知っている ②自分はこういう者だ ③だから会うべきだ | 第9発 |
| 依頼メールでほめたい | お世辞は書かない。感銘を受けた点を具体的に述べるのが誠意 | 第9発 |
| 依頼メールで熱意を伝えたい | 「あなたと仕事がしたい」と直接書かない。熱は語らせるもので宣言するものではない | 第9発 |
| 依頼メールで省きそうな情報 | ①誰にアドレスを聞いたか ②希望日程 ③謝礼の有無と額。カネの話は礼儀 | 第9発 |
## 推敲
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第一稿を書く | 良し悪しも語彙もスタイルも構成も考えない。全部を大急ぎで吐き出す(自動書記法) | 第23発 |
| 第一稿がひどいと落ち込んだ | 安心していい。それが常態。第一稿は「夢の残骸」 | 第23発 |
| 第二稿でやること | とにかく意味の通じる日本語に〈翻訳〉する | 第23発 |
| 第三稿でやること | 初めて紙に印刷し、グルーヴ感だけに専念する。出ていない箇所は大幅に作り直す | 第23発 |
| 常套句・オノマトペ・省略の処理をしたい | 第四稿・第五稿の仕上げ(やすり)でやる。第三稿では手をつけない | 第23発 |
| 推敲の回数を決める | 編集者に渡すまで最低六回。書籍なら多いとき九回 | 第18発/第24発 |
| 推敲の方法を決める | 紙に印刷し、媒体と同じ一行何文字のスタイルで、読者と同じ状態で読む | 第18発 |
| 紙を眺める | 目から離して絵のように見る。黒っぽい=漢字が多い。ひらがなに直し、合いの手を挟む | 第18発 |
| 音読する | 小さく声に出す。流れるか、つっかえないか、句読点の位置は適正か | 第18発 |
| 「うまく書けた」と思った | いったん疑う。読者が受け取りたいのは「うまい文章」ではなく「いい文章」 | 第2発 |
| 推敲の最終段で問う | 人をいい心持ちにさせるか。風通しはいいか。ギラギラしていないか | 第2発 |
| 完成間近だがグルーヴが先を指している | 結論を書き換える。力を出し切っていないのではないかと疑う | 第23発 |
| 赤入れ・修正依頼を受けた | いったんすべて聞く。ただし言われたとおりには直さず、注文の上を行く | 第19発 |
| 抽象的な直し依頼が来た | チャンス。マイルドにする方向ではなく、よりワイルドにする方向で直す | 第19発 |
| 出し惜しみしたくなった | いま、全部出す。次回にとっておかない。出し切った者にだけ次の出場通知が来る | 第24発 |
## 読書と習慣
| 場面 | 行動 | 根拠 |
|---|---|---|
| 執筆時間を決める | 時間帯と場所を先に決め、毎日変えない。創作の女神を迷わせない | 第20発 |
| 書く場所を作る | ドアを閉め、世界を遮断し、ネットを切断する。立派な書斎は要らない | 第20発 |
| 読む時間を確保する | 毎日最低二時間。課題図書に一時間、好きなものに一時間 | 第20発 |
| 課題図書を選ぶ | ①日本文学 ②海外文学 ③社会科学・自然科学 ④詩集を各15分ずつ。①②③は古典から | 第20発 |
| 忙しくて読めない | 時間は創るもの。始発で行く、昼飯を食べながら読む、風呂で15分読む | 第20発 |
| 本を買うか迷う | 本は安い買い物。時間をかけて読む必要があると分かったら迷わず買う | 第21発 |
| 本を手に入れる | まず図書館に予約。毎週日曜に書評から10点をまとめて予約し、回し続ける | 第14発(読書欄②③) |
| 図書館の本を読む | まえがき・あとがき・目次をゆっくり読み、書評で線を引いた箇所を探す | 第14発(読書欄②③) |
| 書棚を整える | すべての本を立てて背表紙が見える状態にする。横積み・前後二段は禁止 | 第21発 |
| 本を読む | 線を引きまくり、重要箇所はページを折る(ドッグイヤー)。徹底的に汚す | 第21発 |
| 読み終えた | しばらく放っておく。一カ月後に折った箇所だけ再読し、熟成させる | 第21発 |
| 抜き書きする | 長財布程度の紙の手帳に手書きで写す。スキャン・写メ・電子コピーは不可 | 第21発 |
| 効果が出ないと感じる | 三年続けてやっと効果が感じられる。停滞に見える時間を耐えられるかで分かれる | 第21発 |
| 人に教える機会が来た | 引き受ける。言語化することで自分の理解が深まり、技の切れ味が鋭くなる | 第6発 |
| 助言をもらう相手を選ぶ | 選ばない。耳はいつでも開けておく。相手が愚劣に見えても聞く | 第19発 |
| 書けなくなった | 歩く。見る。小さなことでいいから、なにか書いてみる。そして生きてみる | おわりに |