# 第5章 5つのゲーム感覚 ——「答えのないゲーム」とその先へ **中心主張**: 「答えのないゲーム」の感覚が身についた人は、部下が「このアイデアでどうですか?」と1案だけ持ってきた瞬間に違和感を持てる。この種の感覚を著者は「ゲーム感覚」と呼び、全部で5つあるとする。**目の前のことに着手する前に「これはどういうゲームか」を見極め、「どのゲーム感覚で臨むか」を決めること**が本書全体のメッセージであり、それが勝ち負け以上に「道中がいかに健やかか」を左右する。 ## 5つのゲーム感覚(暗記対象) 1. **答えのあるゲーム VS 答えのないゲーム**(第1〜4章で扱った) 2. **ボジョレー思考 VS ロマネコンティ思考** ——エリートの罠 3. **理解ドリブン VS 暗記ドリブン** ——エリートの限界 4. **「100分の70」VS「100分の3」** ——エリートの挫折 5. **アーティストモード VS クリエイターモード** ——エリートは一辺倒 ## 実践指針 - **何かを始める前に、それがどういうゲームかを見極め、どのゲーム感覚で臨むかを決めよ。** 何も考えずに「ゲームを開始」すると、本来選ぶべきものと逆を選んで手痛い失敗をする。 - **無意識にボジョレー思考へ流されていないか点検せよ。** 現代は「生産性」「資本経済」に支配されており、放っておけばボジョレー思考に染まる。**無意識なボジョレー思考が一番不健康**。ロマネコンティ思考を意識しつつ、どちらが自分に合うかを見極める。 - **手始めに「自分はどれだけ稼ぎたいのか?」にリアリティ・スウィッチを入れて考えよ。** 意外な発見があり、無意識な「上へ上へ」が消えて本当に大事なことだけに焦点を当てられる。 - **間違いに自分で気づける物事は理解ドリブンでよい。気づけない物事は暗記ドリブンで学べ。** 家電やエクセルは間違えれば挙動やエラー(#REF!、#VALUE!)で気づけるので「なんとなくの理解」で構わない。**「考える力」やフェルミ推定のように、目に見えない答えが無数にありうる領域では自分では間違いに気づけない**ので、暗記が師匠の代わりに寄り添ってくれる。 - **目に見えないスキルを学ぶときは「たとえ話」をインデックスにして暗記せよ。** 正解だけでなく、著者が示した間違った答えごと覚えることで、すぐに使えるようになる。(第3章のB◯条件なら、算数の問題→公務員VSミュージシャン→アメリカンフットボールの子ども無料化→低価格・高効率なコーヒーショップ、というたとえの列を言えるかで理解ドリブンに留まっていないか自己判定できる。) - **挑む前に「自分にとって」100分の70のゲームか100分の3のゲームかを見極めよ。** 同じ試験・恋愛・転職でも、Aさんには70でも自分には3ということがあり、その逆もある。 - **100分の70のゲームでは、特別な努力より自然体で臨み、いかに減点されないかに集中せよ。** - **100分の3のゲームでは、普通のことをしても結果は出ないと割り切れ。** あえて「滑るかもしれないが刺さればホームラン」の発言をする、倍率の高い採用面接なら圧倒的な時間を投下する、といった振り切りが要る。 - **人生トータルで70と3のバランスを取れ。** 毎回100分の3をやっていたら身体が持たない。普段は100分の70に平常心で臨んで勝ち癖をつけ、エネルギーを貯め、いつかの100分の3にフルスロットルで臨む。 - **取り組む前に、アーティストモードとクリエイターモードのどちらでうまくいくゲームかを見極めよ。** ビジネスで抜きん出るには、時に我をあえて通し、時に相手に合わせる使い分けが要る。仕事だけでなく私生活でも切り換える(恋人との旅行先選びは、相手をお客さんと置いたクリエイターモードが大吉のことが多い)。 - **意識しているゲーム感覚は「◯◯VS◯◯」の形式で言語化せよ。** 二項対立で言語化するほど、その感覚が磨かれる。 ## 根拠となる事例・考え方 - **ボジョレー思考**: 「生産性」「合理性」が何よりも重視され、「もっともっと」を追い求めて行き着く先は「青天井」。量産し、たくさん売ることが正義。図では右肩上がりの直線。**ロマネコンティ思考**: 生産性や合理性よりも「あらかじめ決めた」「ゆるぎない」ゴールを追い求め、数も売り先も制限する。**ゴール達成が最終目標であり、ゴール以上は求めない**。図では上限で頭打ちの面。 - **起業の例**: ボジョレー思考なら会社を大きく、事業拡大、最速最強を目指し、「少しは稼げるが生産性が悪い」案件は切り捨てる。ロマネコンティ思考なら目指す売上が1億円ならそれがゴールで、それ以上は目指さず、生産性の悪い案件にも取り組む。 - **「1日1万円稼げるバイトをしますか?」**: 年収3000万円をゴールと決めたロマネコンティ思考の人は、その年の最終日を2999万円で迎えたなら、残り1万円のためにバイトを1日する。自分より稼ぐ人が隣にいても気にしない(3000万円以上には行かないので比べる意味がない)。ボジョレー思考は際限なき成長を追うのでいずれ5000万円に届く可能性はあるが、他者と競争し続ける道を進む。どちらが良い悪いではなく、**明確にすること自体が迷いと無駄なイライラ・競争を消す**。 - **オセロの比喩(章の導入)**: ルールを知らない人がいきなり「さあ勝負」と言われたら、好きな場所に石を置き始め、厳密には反則負けになる。勝敗を分ける「端を取ったら勝てそうだ」という感覚は一度負けるまで気づけない。人生やビジネスはオセロよりはるかに複雑なので、**「道中がいかに健やかか」=プロセスがセクシーか**が問われる。 - **暗記ドリブンの定義**: 「難題に出会う→"暗記したこと" をそのまま思い出す→それを頭の中に浮かべ、その教えを元に解き始める」。**理解ドリブン**は「難題に出会う→何となく解き始める」。あえて二項対立で言うと「再現率は6割止まりだが頭は疲れない理解ドリブン」VS「頭は疲れるし暗記時間も必要だが、再現率100%を目指せる暗記ドリブン」。エリートほど理解ドリブンで学びがちで、それが成長スピードを鈍化させる。 - **新規事業立案への適用(5-5)**: 2週間後にプレゼンという新規事業案件は、おのずと①「答えのないゲーム」であり④「100分の3」になりそうだと見極まる。その上で②をロマネコンティ思考で捉えれば「売上1億円」とゴールを先に固め、レバレッジが効かなくても手堅いスモールビジネスを選ぶ道が視野に入る。ボジョレー思考で捉えれば新サービスの売上をn倍していくことが求められる。**先に決めておくからこそ進行の仕方が変わり、進行中のメンバー間のいざこざや会社との方向性の違いに悩まなくて済む**。⑤をクリエイターモードで取れば市場が求めるものを作る「プロダクト・マーケット・フィット」が主題になり、お客さんをVC(ベンチャー・キャピタル)と定めれば資金調達しやすい事業に寄せる選択も入ってくる。アーティストモードなら自分がやりたいことに一直線で向かう。 - **本の締めくくり**: 著者は本当は人生やビジネスを「ゲーム」と捉えるのは好きではない、と断った上で、それでもこの戦い方の感覚を持つことは健やかに生きる上で大切だと述べる。世の中は "当たり前" のようにゲーム感覚を押しつけてくる——資本主義社会の主流である「もっともっと」のボジョレー思考の先には「お金はたくさんあるほうがいい」という考え方がある。**その流れに惑わされず、自分らしいゲーム感覚を養って人生とビジネスに取り組むことが最高に健やか**。このゲーム感覚は「ゲームに勝つ」ことにも効くが、言い換えれば**世の中の当たり前に流されない感覚を養うこと**につながる。「『答えのないゲーム』の先にあるゲーム感覚でした!」で本文は閉じる。 ## キーワード - **ゲーム感覚**: 「答えのないゲーム」の感覚が身についた人が持てる、違和感を含む判断の構え。全5種。 - **ボジョレー思考**: 生産性・合理性・量産を正義とし、青天井に「もっともっと」を追う思考。 - **ロマネコンティ思考**: あらかじめ決めたゆるぎないゴールの達成を最終目標とし、それ以上を求めない思考。 - **理解ドリブン/暗記ドリブン**: 学習の起点を「理解」に置くか「暗記」に置くか。目に見えない答えを扱う領域では暗記ドリブンが優位。 - **100分の70/100分の3**: 100人中70人が受かるゲームか、3人しか受からないゲームか。「自分にとって」どちらかを見極めてから戦い方を決める。 - **アーティストモード**: 誰の指図も受けず、自分の思いのままに最後までやり切るモード。目の前にいるのは「自分」。 - **クリエイターモード**: お客さんの期待に応え、超えるものを作り切るモード。目の前にいるのは「お客さん」(ビジネスではクライアント、時に上司)。 (part3の本文はここで終わり。「おわりに」「謝辞」「参考文献」「奥付」はこの分冊には収録されていない。)